女優の奈緒(29)が5日、東京都内で開催された主演映画「先生の白い嘘」(三木康一郎監督)公開初日舞台あいさつに出席。インタビュー記事での不適切な発言内容が炎上する事態になった三木監督らが謝罪するという異例の舞台あいさつとなった。

 映画は鳥飼茜さんの漫画が原作で男女の性の不条理に切り込む衝撃作。奈緒や三木監督と共に共演の「HiHi Jets」猪狩蒼弥(21)や三吉彩花(28)、風間俊介(41)も登壇したが、司会者も含めてほぼ全員が黒い衣装で登壇した。

 三木監督は公開直前の4日、一部メディアのインタビュー記事で、奈緒側から要請があったインティマシー・コーディネーターを拒絶した経緯を明かし、ネット上で多くの批判の声が上がる事態となった。インティマシー・コーディネーターとは性的な表現を伴う撮影の際、制作者と出演俳優との間に立って調整を行う専門家を指す。

 予定より大幅に遅れて始まった舞台あいさつでは最初に映画の製作委員会を代表して松竹の幹部が登壇。神妙な面持ちで「撮影当時は日本での事例も少なく、第三者を介さず直接コミュニケーションを取る選択をした」と釈明。最大の配慮を行って撮影したことも説明したが、今回の批判を受けて、「われわれの認識が誤っていた。深く反省している」と謝罪。司会者の奥浜レイラさんも個人の意見として、「インティマシー・コーディネーターは必ず起用されるべき」と訴えた。

 続いて騒動の発端となった三木監督は「私の不用意な発言により皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを謝罪したい。本当に申し訳ありませんでした」と4度頭を下げた。会場では原作者の手紙も読み上げられ、三木監督は「映画製作者としてしっかり襟を正して、しっかり精進してまいりたい」とコメント。登壇中は天井を見上げるなど終始落ち着かない様子だった。

 沈痛な空気の中、マイクを握った奈緒は「私のことを心配している声も届いているけれども、私は大丈夫です」とキッパリ。前日に原作者に連絡を取って話したことにも触れながら「原作にすごく支えられた。初日を迎えていろいろな複雑な思いが正直あります。でも力強い映画になっていると感じた。皆で乗り越えた大変なシーンを思い出しながら、それが形になってうれしかった」と率直な心境を明かした。

 さらに「昨日の記事があってから皆さんに不安を抱えさせてしまっていると思う。私自身は原作に心からほれ込み、出演を自分で決めた。いろいろな悩みやすれ違いがあったことも事実。でも権力に屈するようなことは一切なく、対等な関係で監督とも話した。対等な現場ではありましたので皆さん安心して」と訴えた。最後は「すべての人が自分自身を自分で守れる、そして誰かが悲しんでいたら手を差し伸べられる、そういうよどみのない、きれいな川を、私は心からあきらめずに目指したい」という言葉で締めくくり、劇場は拍手に包まれた。