【実録 竜戦士たちの10・8】(97)まだまだセ界の灯は消さない…今中慎二の”反攻声明”
中日スポーツ6/6(金)23:43

1994年6月14日の中日スポーツ紙面
◇長期連載【第3章 走る巨人、もがく竜】
貯金は巨人が独り占め。他の5球団はそろって借金生活。「1強5弱」といった声も出始めた1994年のセ・リーグペナントレースだが、走る巨人にストップをかけたのは、やはりこの左腕だった。
巨人の連勝で迎えた6月12日の中日―巨人第3戦。ナゴヤ球場のこのカードは91年の8月以来、4年越しの7連勝と無類の強さを発揮する今中慎二も、この日は不安な立ち上がりだった。
完封勝利を飾った横浜戦(横浜)から中4日。しかも試合開始当初から降り続いていた雨が2回表1死、大久保博元の打席で強まり30分間の中断。その再開直後、大久保は三ゴロに仕留めたものの続く井上真二、長嶋一茂にまさかの連続アーチをかけられ、2点を奪われてしまう。
「こういう時(中断からの再開直後)にやられるというのをよく見てましたけど、自分も簡単に投げてしまった。巨人打線は下位もよく打つし、やっぱり勢いに乗っているなあと思った」
雨の中、ぎっしりスタンドを埋めたD党も、エース今中での巨人戦3連敗が頭をよぎったことだろう。そんな悪い予感を吹き飛ばしたのは、故障欠場の主力に代わりチャンスを与えられた男たちだった。
先制された直後の2回裏。10日に死球を受けた左わき腹の痛みが引かず登録抹消された仁村徹の代役、前原博之が適時二塁打で反撃のノロシを上げる。さらに、右足親指剝離骨折の治療のため一時帰国したパウエルに代わる清水雅治の中前2点打で逆転した。
3回にも前原の2打席連続二塁打など4連打で3点を追加。この打線の援護に今中のギアが上がらぬはずはない。4回以降は巨人打線を散発の2安打に抑え、143球完投で7勝目を挙げた。
「あの2人を抑えたのが大きい」と振り返ったように4番・落合博満、5番・コトーをともに4打数無安打に封じ込んだ。これで前回に続いての連敗ストッパーとなったが、「まだ借りが返せたとは思っていませんよ」と今中。というのも自身に負けは付かなかったものの、先発し8イニング2失点で降板。その後、チームがサヨナラ負けした5月31日の悔しさが、いまだに気持ちの中でくすぶり続けているという。
勝率を5割に戻し、2位返り咲き。「このままシーズンが終わってしまったら、ずっとあのゲームが悔いになる」。まだまだセ界の灯は消さない。まぎれもない今中の”反攻声明”だった。
=敬称略











