【実録 竜戦士たちの10・8】(101)「乗っていけると思う」 山本昌広6月初勝利で逆襲宣言
中日スポーツ6/16(月)22:49

ジェームズの活躍を報じる1994年6月24日付の中日スポーツ紙面
◇長期連載【第3章 走る巨人、もがく竜】
つい1週間前の金沢ではチームに連勝をもたらした佐藤秀樹、鶴田泰の2年目コンビで連敗。借金生活に逆戻りし、首位・巨人とのゲーム差も9・5と開いた中日が、1994年6月23日の横浜戦(ナゴヤ)に連敗ストッパーとして送り出したのは6月3連敗中の山本昌広だった。
「マウンドに上がって、コントロールが定まらないような感じがあって、不安げに投げていた」と自己分析した山本昌。前年、最多勝利、最優秀防御率のタイトルを獲得。この年も4月月間MVPと最高のスタートを切った左腕も、勝てなくなると、不安ばかりが先に立つものなのだろうか。
1死から石井琢朗に四球を与えると、駒田徳広に左前打。ここで普段の山本昌なら簡単にさばき併殺にしたであろうローズの投手右へのゴロを捕り損ね、中前への先制適時打としてしまった。
だが、この日は打線も小刻みに得点し、6月初勝利へ山本昌を援護する。2回に中村武志の二塁打で同点とすると、前日の試合で自打球を右ひざに当てた影響で欠場した立浪和義に代わり、9試合ぶりに3番に入ったジェームズが大暴れ。3回に右翼席へ勝ち越しソロ。5回にも2打席連続アーチを放つなど来日初の4安打を記録した。
「立浪もパウエルもいない。“自分がやらなければ”という気持ちが、こういう結果につながったと思う」とジェームズ。横浜投手陣から15安打。しかも1回と7回を除く6イニングはコツコツ1点ずつ積み重ね6得点。こんな味方の援護に山本昌も立ち直り、2回以降は無失点。「この前のこと(広島戦で逆転サヨナラ負け)もあるし、最後まで気を抜かずに投げることだけを考えていた」と完投で5月22日以来となる6勝目を挙げた。
前日は乱闘騒ぎもあり、後味の悪い連敗となっただけに、高木守道監督が「昨日のことは、あまり意識してなかったけど、結果的に勝てて良かった」とホッとした表情を浮かべれば、山本昌も「僕は毎年、この時期から調子が上がっていく。調子自体は前の試合も悪くなかったし、1つ勝ったら乗っていけると思う」と巻き返しを誓った。
東京ドームではこの日、巨人が2度のビハインドをはね返し広島に3連勝。早くも貯金20に王手をかけた。やっと勝率を5割に戻した中日の左腕の声は、まだ長嶋茂雄監督に届くはずもなかっただろうが…。=敬称略











