ラモス瑠偉編集長はじっと目を閉じて振り返った。「2人の日本人女性が発信した強烈なメッセージに、心の底から感動した」。白血病におかされながら見事に復活を果たした競泳の池江璃花子(20)=ルネサンス。7枚の名前入りマスクで人種差別に強く抗議し、全米オープンを制したテニスの大坂なおみ(22)=日清食品。ラモス編集長は「コロナと戦う日本人に、大きなエネルギーと希望を与えてくれた。本当にすごいと思う」と賛辞と拍手を送った。

重なった自分の闘病「あの時は…本当に怖かった」

 ニュースで、必死に泳ぐ池江さんの姿を見ていて、涙がこぼれそうになった。すてきすぎる。白血病におかされていることを自ら公表し、長期療養を経て1年7カ月ぶりの実戦復帰。8月29日、東京辰巳国際水泳場で行われた東京都特別水泳大会で女子50メートル自由形に出場し、10人が泳いだ組で1着に入った。自身の日本記録より2秒11遅い26秒32だったが、10月の日本学生選手権(インカレ)出場に必要な基準タイム26秒86はクリアした。

 筋肉がすっかり落ちてしまい、あんなに細くなっていたのに、そこからトレーニングを積んで、よくここまで戻してきたと思う。いつかまた泳ぎたいという思い、それを信じる力がすごい。

 治療とリハビリの苦しさは想像を絶するものだっただろう。私自身、2016年の年末に脳梗塞で倒れた経験がある。かなり危ない状況だったが、運良く一命は取り留めた。ただ、手も足も動かないし、言葉も出てこない。それでも「絶対にもう一度ボールをけるんだ」という思いだけでリハビリに取り組んだ。心が折れそうになったことは一度もないが、再発するかもしれないという不安との戦いはきつかった。もう一回やったら命の保証はない。そう思うと、本当に怖かった。

 私自身、彼女の懸命に泳いでいる姿を見て、勇気をもらった。彼女は「きっと夢はかなう」と思い続けている。オリンピック出場という夢に向かって、これからもめいっぱい楽しみながら、泳ぎ続けてほしい。

大坂なおみは「日本の誇り」心揺さぶったあの行動

 もう一人のヒロインは大坂さんだ。圧倒的な強さで全米オープン2度目、4大大会3度目の優勝を果たした。それだけでもすごいことなのだが、それに加え、黒いマスクに白人警官らに殺害された黒人被害者の名前を白い字で刻み、決勝までの7試合の入退場の際、男女計7人の名前がそれぞれに入った7枚のマスクを着用することで、世界中に強烈なメッセージを発信した。

 優勝インタビューで「どんなメッセージを伝えたかったか?」と質問された大坂さんは、逆に質問し、「どんなメッセージを受け取りましたか?」と問い掛けた。日本で暮らしている日本人にはなかなか理解できないかもしれないが、海外では肌の色や国籍による差別の問題はものすごく身近でデリケートで根深い。

 私も20歳で来日した当初は「外人」であるがゆえに、嫌な思いをたくさんした。もちろん、親切な人もいるが、そうでない人もいる。おそらく大坂選手もいじめに遭ったり、嫌な思いをしたことがあったと思う。

 今回のマスク着用は、とてつもなく勇気のある行動だ。それをよく思わない人もたくさんいる。それでも彼女はメッセージを発信し続けた。同時に、彼女自身もマスクに名前を記した人たちから力をもらえたのではないか。まさに魂の戦い。そのあきらめない心がアメリカ中の、全世界の人たちの心をつかんだ。そして彼女自身も大きなパワーを得ることができたのではないか。

 いま、世界中の人たちが新型コロナと戦っている。日本の人々も今後も続いていく長い長い戦いに疲弊している。そんな中、2人の日本人女性の放った強烈な光は、私たちにコロナと戦うためのエネルギーを与えてくれた。まさに日本の誇り。諦めない心と希望を持ち続けることができる彼女たちは、本当に強い。

酒井宏樹は「世界で5指に入る右サイドバックに成長」

 9月13日に行われたフランスリーグ第3節、パリ・サンジェルマン(PSG)―マルセイユ戦の終盤、試合が大乱闘となり、5選手が退場になった。そのきっかけとなったのが、マルセイユの酒井宏樹とPSGのネイマールの火の出るようなマッチアップだ。

 この試合、酒井はネイマールを完璧に封じ、仕事をさせなかった。マルセイユに移籍してから、酒井は大きく成長している。特に、ボールを奪う技術は世界でもトップクラスだ。間合いをぎりぎりまで詰めたポジショニング。体のぶつけ方、使い方。経験を積み、自信にあふれている。そして要求されたことを献身的にやり切る姿勢。これは日本人の一番素晴らしい能力でもある。いまや彼は世界で5指に入る右サイドバックに成長した。

 残念なことに、酒井に抑えられたネイマールがいらついて、試合は大荒れ。あげくにネイマールが酒井に対して人種差別発言をした疑いが浮上し、大問題に発展している。サッカー界でも差別問題は枚挙にいとまがない。悲しい話だ。(元日本代表)