◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」

 監督の最大の仕事は決断だ。3度目のシーズンに臨む立浪監督は、柳を開幕投手に指名し、懸案の二遊間を田中、ロドリゲスで固めた。そして「1番・中堅」に三好を抜てき。左翼には新外国人のディカーソンを置くことで、もうひとつの決断をしている。

 「ああ、僕は何も変わんないですね。出るところできっちり仕事ができるように準備をするだけですから」

 前日練習を終えた大島に話を聞いた。彼はルーキーイヤーの2010年に「1番・中堅」で開幕スタメンに食い込んだ。そこから落合、高木、谷繁、森、与田、立浪の6人の監督は、開幕戦の先発メンバー表に彼の名を書き続けた。「新人から」の条件をつければ、巨人・長嶋茂雄(17年。引退まで継続)、阪神・鳥谷敬(15年)などがあるが、大島の14年連続は球団最長。その記録がついに途絶える日がやってくる。

 オープン戦の打率は大島が2割、三好が2割6分2厘、ディカーソンは1割6分7厘。実績を考えれば選ばれても不思議はないが、大島自身も覚悟はできていた。

 「寂しいのは寂しいけど、それを言っても仕方ない。三好が打てばチームとしてはいいことだから」

 皮肉にも「15年」を阻まれたのは、自主トレをともにやりたいと申し出てきた三好。最初に打撃を見て「形は悪くない」と感じ、大島塾のハードなトレーニングにも「僕がやり始めた年齢より若いから、吸収力が早かった」と目を細めた。しかし、僕が大島のすごさを感じたのは、開幕スタメンを外れる予感がした3月中旬以降だった。表情に出すこともなく、練習態度ににじみ出ることもなく、淡々と同じ練習を繰り返していたからだ。

 「そりゃそうですよ。同じ準備ができたし、不安はないです」

 それが本物のプロだと顔に書いていた。15年目で初めてベンチから見るであろう開幕戦。低迷が続くドラゴンズだが、ようやく大島を外せるチームに成熟してきたということでもある。