【岩瀬仁紀の目】◇28日 中日0―0広島(バンテリンドームナゴヤ)

 この日が今季初登板初先発だった中日・高橋宏斗投手(22)が、7イニングを散発3安打の無失点に封じた。プロ野球最多の通算1002試合登板、405セーブを記録した本紙評論家の岩瀬仁紀さん(49)は「初登板でまずは抑えなきゃというところで7イニング無失点なので、文句のつけようがない内容。満点でしょう」と称賛した。

 広島打線は投手の九里以外、1番から8番まで左打者を並べてきた。立ち上がりは150キロ台半ばのストレートで押した。2回は先頭の坂倉を四球で歩かせたあと、前日(27日)に3号本塁打を放った宇草をスプリットで二塁への併殺打に仕留めた。

 「高橋宏自身、乗っていけるダブルプレーになったと思います」。この日の投球については「スプリットの制球が本当に良かったのと、ストレートにシュート回転がなくなりました」と分析したうえで、高橋宏の変化をこう表現した。

 「一瞬、変化球投手にも見えました」

 それほどスプリットに頼る投球だったのだ。7回に先頭の松山に右前安打されたあと、4番・坂倉は外角のスプリットでスリーバントを失敗(記録は三振)させた。次の宇草をスプリットで空振り三振。矢野も外角スプリットで二ゴロに打ち取った。

 2月の今春キャンプでは、オフに一緒に自主トレをしている山本由伸投手(ドジャース)の左足を上げないクイック投法のようなすり足にして踏み出す投球フォームを試し、制球が定まらなかった。キャンプ終盤に足を上げるフォームに戻したが、なかなか本来の投球ができず、開幕は2軍で迎えた。開幕から1カ月が経ち、25試合目に巡ってきた登板で結果を残した。

 「自分で納得してやらないと何事もできないので、いろいろなことを経験していくなかで自分はこうしたほうが良いという引き出しにはなると思う。一見、遠回りのようですけど、今後の成長に向けての一つ。いろいろな方法を試すのは良いと思います」。こう話す岩瀬さんは、高橋宏の方向性に意見も述べた。

 「ストレートで押して相手を圧倒できる投球をしてもらいたい」

 高橋宏は援護をもらえず、白星はお預け。投げ合った広島の先発・九里も7イニングを無失点。中日は4安打で、4度の得点圏であと1本が出なかった。

 岩瀬さんは九里の投球に「ピッチングを良く知っている投手。バッターをかわすとか、いろいろな配球を駆使しながら、この球は甘いところへいってはいけない、ここは別に甘くても良い、を分かりながら投げている。それを攻略するのは難しい。でも、何とか点を取らないと勝てないので、6回の1死二塁からカリステ、中田(ともに遊ゴロ)で1本出さないといけない」と振り返った。