◇5日 男子ゴルフ 中日クラウンズ最終日(愛知県東郷町、名古屋GC和合C)

 2打差3位で最終日を迎えた米沢蓮(24)=ティ・エム・プラテック=が6バーディー、1ボギーの65で回り、18番まで続いた片岡尚之(26)=CSテクノロジーズ=との死闘を制して、通算13アンダーでツアー初勝利を飾った。1打差2位に片岡。3日目まで単独トップだった小木曽喬(27)=フロンティアの介護=は通算8アンダーで3位だった。

 決めれば優勝の1・5メートルのバーディーパット。ラインは、真っすぐの上り。プロなら簡単に入る距離だ。それでも米沢の手は震えた。極限の緊張で、18番グリーンがゆがんで見えた。打った。カップの真ん中からきれいにいれて、渾身(こんしん)のガッツポーズを繰り返した。

 「絶対に入れてやると思って打った。これまで本当に苦しかったから。このパーパットで、すべてを払拭してやると」。ラウンド後の記者会見では万感の思いを込めて、そう話した。

 東北福祉大時代の2019年、ツアーのアジアパシフィックオープンに出場し、アマながら2位に入った。

 「あのころは今よりもっと楽にゴルフをしていた」と語る。パットの不調に苦しみだしたのはプロに入ってから。入らないことが重なって、ついにパットを打つこと自体が怖くなってしまった。

 「あの時の心情は言葉にはできないです。うまく打てなくて、入らないことが重なって、どんどん自信が削られていった。周りに相談したし、技術的なこともいろいろ試した」。特効薬なんてない。地道に練習をし、少しずつ克服していった。

 8番で単独首位に立ったが、12番でボギーをたたいて片岡に並ばれた。続く13番。2打目がバンカーに入り、へりの部分の砂にボールがめり込んだ。出すには出したが、ピンまでは5メートル以上あるパットが残った。それでも難しいフックラインを完全に読み切って、パーをセーブしパットが米沢を救った。

 「最大のピンチでした。あれを乗り切ったことが大きかった」

 悲願のツアー初優勝。難コースを攻略し、岩手県出身選手初のツアー勝利を手にした。米沢は今も岩手に拠点を置く。

 「岩手が好きなんです。落ち着けるし、みなさん優しいし。もちろん自分も(花巻市出身の)大谷翔平さんのように、岩手のスポーツを盛り上げるような存在になりたい」と笑った。