【リスボン=ルイス・バスコンセロス】F1運営会社と親会社リバティメディアが、ともに本拠を置く米国でプレッシャーにさらされている。米チーム「アンドレッティ・キャデラック」の新規参入を拒絶したことで、独占禁止法の観点から米連邦議会下院に質問状を送りつけられた。対応を間違えれば、他チームも含めた再審査を求められるうえ、既存10チームからの突き上げも必至。昨季から年3大会を実施する米国で、ビジネス上は絶好調なものの、難しい立場に追い込まれた。

好調な市場で思わぬ壁

 人気、収益ともに急上昇中の米国で、F1が思わぬ壁にぶち当たった。米国内の独占に目を光らせる下院の司法委員会が、運営会社のステファノ・ドメニカリ、リバティメディアのグレッグ・マフェイ、両最高経営責任者(CEO)に質問状を送付。国際自動車連盟(FIA)の審査を通過したアンドレッティ・キャデラックを拒絶した件について、21日までという短期間での返答を求めている。

 ジム・ジョーダン司法委員長は質問状の中で、「F1がアンドレッティ・キャデラックの参戦を認めなかった理由は表面的かつ一方的。まともに適性を審査したとは思えない」と糾弾。「既存メーカーのエンジンを使う計画を非難する一方で、ゼネラル・モーターズが新エンジンをつくる構想にも難色を示した」と矛盾を指摘した。

消費者に損害を与える

 「F1のチーム数を制限することで、スポンサー料もチーム価値も高騰する。アンドレッティ・キャデラックの参戦が1年遅れるごとに、成績が低迷するF1チームには利益となり、アメリカの消費者に損害を与える」と個人的な意見も披露。「当委員会は、スポーツリーグの構造と競争に関する法案の提出を検討している。アンドレッティ・キャデラックの参戦を拒否した決定について、スタッフレベルでの説明を求める」と締めた。

 ドメニカリCEOは、返答期限前で最後の大会となる第7戦エミリアロマーニャGP(19日決勝)で、既存10チームと協議の場を持つはずだ。ただ、仮にアンドレッティに26年からの参入を認めたとしても、問題は終わらない。FIAは当初25〜27年の新規参入プロセスを打ち出していたため、27年に新規参戦を望むチームの審査に再び取り組む必要がある。

 一方、既存10チームは、26年から適用される新コンコルド協定で参加チーム数を現行の「最大12」から「10」に減らすよう画策してきたが、さすがに実現しないだろう。あまりにもイメージが悪すぎるし、今回の米国下院はおろか、欧州連合(EU)からも目をつけられる事態になりかねないからだ。これまで同様、参加チーム数が増えても配分される利益が減らないよう、運営会社に強く求めていくことになる。

 5日に終わったばかりのマイアミGPでは、3日間で延べ27万5000人が来場し、決勝の生中継は米国で史上最多の約310万人が視聴したという。F1が認知度も人気も高まる一方の米国で難局に立たされたことは、大いなる皮肉と言えよう。