◇番記者が見た

 パドレスのダルビッシュ有投手が日米通算199勝目を挙げた。メジャーの競争激しい世界で、まだ第一線で活躍する37歳。支える一つは、尽きぬ向上心と探究心だ。

 登板前日の11日。ダルビッシュは、ドジャースの山本由伸投手が投げるブルペンの後ろで、食い入るように投球を見ていた。その理由について語った。

 「興味です。(山本選手が)どんな球を投げてるんやろうって。間近でちょっと見たいっていうのがあって。チームに何かこんなことやってるよじゃなくて、自分に生かす。こういう体の動きだとか、ブルペンでどういうことを意識しているのかみたいなことを理解できたらと」。

 37歳になっても、ダルビッシュに凝り固まった固定観念はない。スポンジのような吸収力と、その知識を聞き出す対話力。若い投手に教えられる引き出しは多くあるが、自身も常に学ぶ姿勢を持つのが、ダルビッシュのすごみだ。

 11日の試合前にはドジャースの大谷翔平とも10分以上談笑した。話の内容について「基本的に自分は野球の話しかしない。野球とかトレーニングとか、そういう話をずっとしてましたね」と振り返った。トミー・ジョン手術明けの大谷のトレーニング法に耳を傾け、「自分に生かす」ことを考える。

 以前、ダルビッシュはメジャーの世界は「いたちごっこだ」と語ったことがある。常に新たなテクノロジーやデータ収集が導入され、投手も野手も一足飛びで進化する。そのスピード感に、ダルビッシュはアンテナを張り、情報をアップデートしながら「進化」を遂げてきた。今の自分を常に超えようとしている。(阿部太郎、写真はAP)