F1 第7戦 エミリアロマーニャGP フリー走行 17日 伊イモラサーキット(4・909キロ)

ペン=尾張正博、ルイス・バスコンセロス

 現役ドライバーや関係者らが、30年前に当地で亡くなった偉大な先達をしのんだ。4度のF1王者セバスチャン・ベッテル(36)=ドイツ=が呼びかけ、1994年のサンマリノGPで事故死した「音速の貴公子」アイルトン・セナと、ローランド・ラッツェンバーガーの追悼イベントを16日に開催。降りしきる雨の中、2人をイメージしたおそろいの黄色いTシャツ、紅白のリストバンドを身に着けてランニングするなど、改めて2人の事故と安全性向上に思いをはせた。フリー走行1回目はフェラーリのシャルル・ルクレール(26)が最速。

 黄色い軍団がコースを埋め尽くした。セナのヘルメットと同じ色のTシャツは「永遠のセナ」のメッセージ入りで、リストバンドはラッツェンバーガーの母国オーストリアの国旗をイメージ。おそろいの格好で、ときに土砂降りとなったイモラを駆け抜けた。

 3度の王者に輝いたセナの銅像や、2人の事故現場では一時停止し、ベッテルの追悼スピーチに耳を傾ける。「アイルトンは特別な選手だった。短期間のF1参戦で多くのポールを獲得し、勝利を積み上げた。クルマの外でも素晴らしい人間だった。母国ブラジルの教育を支援し貧困から抜け出すのを助けようとした」

 現役ドライバーの大半は30年前、まだ生まれていない。セナが走る姿をリアルタイムで見ていなくても、あこがれを抱く選手もいる。アルピーヌのピエール・ガスリーもその1人だ。

 「小さいころから、ずっと尊敬しているよ。僕にとっては、最も成功したフランス人F1ドライバーのアラン・プロストとセット。2人の争いはF1で最も象徴的なバトルだと思う。アイルトンはレースのスタイルも素晴らしいし、価値観や言動などの人柄もすごく魅力的なんだ」

 今大会、ガスリーはセナに敬意を表し、黄色い特別ヘルメットを用意した。数週間前にはセナが初めて乗ったF1マシン、1984年のトールマンTG183Bをドライブ。「あれに比べたら、今のF1マシンは本当に簡単だよ。間違いなく素晴らしい経験になった」と声を弾ませた。

 ベッテルは「2人の痛ましい事故は、F1の安全性向上に向けた多くの施策につながった。それは2人の遺産の一部だ」と改めて指摘。現役ドライバーはもちろん、多くの関係者やファンの心の中で、2人は永遠に生き続ける。