◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」

◇17日 DeNA2―1中日(横浜)

 涌井、DeNA・東ともに尻上がり。1回から試合は動いたが、その得失点だけで試合の決着がついた。涌井は1回に2点を失い、2回までに6安打。正直、121・50という数字が僕の頭をちらついていた。

 5月1日のバンテリンドームでの対戦で、自己最短の2/3イニングを9失点という衝撃のノックアウトを食らっていた。DeNAとの対戦防御率が121・50。しかし、悪夢は再現されなかった。2回の1死満塁をオースティンの投ゴロ併殺打で切り抜けてからは、11人連続凡退。6回は牧の四球に敬遠と暴投で2死二、三塁のピンチを招いたが、追加点を許さなかった。

 涌井自身が語ったように、惜しむらくは1回に牧、宮崎に浴びた2者連続の二塁打。いずれも浮いたスライダーをたたかれた。僕が試合後に聞いたのは木下。彼もまた、この再戦に期するものがあったはずだ。5月1日に先発マスクをかぶり、2回の守備からベンチに下げられている。

 「1回はカウント負けしてしまって、立ち上がる前に打たれた感じになりましたが、途中からは配球を変えたというよりは予定通りに攻めたつもりです」

 木下はこう話したが、球種の割合は明らかに変わっていた。スライダーを減らし、連続で打ち取った11人のうち6人はカーブから入った。最も遅い球種を見せ、最も速いストレートで押した。「ゾーンで勝負」の鉄則は崩さず、緩急での揺さぶりは確かに効いていた。

 前回の対戦からDeNA打線は大きく変わっている。1番は桑原から蝦名に変わり、筒香が加わり、オースティンが戻ってきた。実績や長打力は格段に上がっているが、「ゾーンで勝負」は十分に通じると実証された。球場の狭さや各打者の威圧感を恐れる必要はないということだ。

 慎重さが過ぎて窮屈な投球になれば、DeNA打線の思うつぼ。打たれた1回よりも、抑えた3回以降にこそ答えがあると思いたい。