◇20日 大相撲夏場所9日目(東京・両国国技館)

 東前頭2枚目の平戸海(24)=境川=が新小結の大の里(23)=二所ノ関=を押し出し、4勝目を挙げた。

 体格に恵まれているとはいえない。でも、平戸海の体にはでっかい志が詰まっている。

 「いい相撲が取れたんでよかった。入った(入門した)順とか気にしてないですけど、同年代なんで負けられないと思った」

 平戸海は今では少なくなってきた中学卒業後入門のたたき上げ。同じ2000年生まれの大の里は大学時代に個人タイトル13冠。入門からわずか1年で三役に駆け上がった超エリートを、平戸海はあふれんばかりの気迫をぶつけて押し出した。

 初対戦した先場所は寄り切られた。「意識しています」という相手に敗れ、そのときは悔しさが込み上げた。しかし、この日は大の里に何もさせない完勝。「自信は出てきます」と胸を張った。

 「たたき上げは、しっかり稽古をしないと上には上がれない」という稽古の虫だが、簡単なことではない。稽古場の壁に「境川部屋綱領」が額に入って掲げられている。師匠の境川親方(元小結両国)が独立したとき、部屋付きとなった大鳴戸親方(元幕内吉の谷)と作った10の文章。稽古後に全員で唱和している。その中にある「己だけが辛いわけではない、道に迷ったら、故郷・家族を思い出す」。平戸海はこの一文を指し、励まされてきたと話した。

 平戸海は妹が2人、弟が1人いる。15歳で入門したとき、末っ子の弟はまだ1歳だった。「入門して2、3年は抱っこしたら泣かれました」。離れて暮らしているので仕方ないが、小学3年生になった弟は今、兄を全力で応援してくれる。4勝5敗と星を戻してきた。故郷・家族から力をもらって―。