◇米ツアー見聞録

 ザンダー・シャウフェレ(米国)のメジャー初制覇で幕を閉じたメジャー第2戦の全米プロ選手権(16〜19日・ケンタッキー州)だが、「警察に拘束」という”悪夢”に見舞われた世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー(米国)の対応に称賛が送られている。

 第2日の早朝、会場のバルハラGC近くで交通死亡事故が発生し、周辺は大渋滞。コースに向かって運転していたシェフラーが「警官の指示に従わなかった」として拘束。手錠をかけられ、連行され騒然となった。が、約1時間後に無事釈放されてスタート時間に間に合いプレー。66をマークし、トップと3打差の4位で決勝ラウンドへと進んだ。

 この前代未聞の逮捕劇にも「亡くなった人のことを考えると、(拘束されたことなど)大したことではない」と話し、この日は「気持ちも高ぶり、アドレナリンが出ていた」という。逆に第3日は「4つの罪で起訴」されるという事態を把握。「全くいつもの自分ではなかった」と73と後退、42ラウンド続いていた「イーブンパー以上」の記録も終了した。24位となり優勝争いから実質的に脱落、4月のマスターズ・トーナメントに続く「メジャー2連勝」の夢も途絶えた。

 それでも最終日は65をマークし8位。さすがの強さを発揮した。第3日に崩れたことは「事件のせいだとは言わない。ただ、ひどいプレーだった」とし、大歓声の中には「スコッティ! 釈放!」などと面白がる声もあったが「スコッティしか聞こえなかった。とてもありがたかった」と感謝した。前週に第1子が誕生したばかり。「早く(テキサス州の)家に帰りたい」と疲労の色をにじませた。

 警官は、義務とされている体に付けたカメラをオンにしていなかった、もしくは付けていなかったため拘束された時の映像がないことが判明するなど警察の対応への批判の声が上がり、今後は告訴が取り下げられる可能性もあると地元紙が報道している。27歳のシェフラーは一度もいら立ちを見せることもなく、堂々とした一流のふるまいだった。今週は23日に地元で開幕するチャールズシュワブ・チャレンジに出場する。(全米ゴルフ記者協会会員)(写真はAP)