世界一のシューターになる! バスケットボール女子日本代表の平下愛佳(22)=トヨタ自動車=が初の五輪出場を目指す。メンバーの枠は12人と狭き門。それでも、五輪切符を獲得した2月の世界最終予選(ハンガリー)を経験したシューターは「目標は金メダル」と力強く語った。 (占部哲也)

 バスケットボール女子日本代表の恩塚亨監督(44)が掲げる「走り勝つシューター軍団」に特長が当てはまる。平下は自身の武器を「攻撃は3点シュートと走ること。そこが強みだと思う」と真剣なまなざしで発した。

 代表デビューとなった2022年9月のW杯で爆発した。チーム最年少の20歳ながら、初戦のマリ戦で3点シュート5本を含むチーム最多の17点を決めた。指揮官から「日本一のシューターになってほしい」と言われて立ったコートで出した一発回答だった。

 愛知県長久手市出身。愛知・桜花学園高では主将として3冠を達成した。名将・井上真一監督から「厳しいことを主将が言わなければ駄目だ」と言われ続けた。愛くるしい笑顔が印象的。もともと他人を怒ることは苦手で、当時を思い出してこう話した。

 「最初は難しかった。自分の意思を伝えるために強く言う。3年生になって、やっとできた。そこは本当にありがたいなと思います」

 進路は、憧れる栗原三佳さんが所属するトヨタ自動車を選んだ。そして”長距離砲”を磨いた。「3点シュートを打ち始めたのはWリーグに入ってから。もともとは遅いシュートフォームだったけど、栗原選手のものすごく速いシュートフォームを見て、まねした」。1日300〜400球を打ち込み、新フォームを固めた。

 飛躍を遂げ、22歳で五輪切符を獲得したメンバーに入った。五輪最終予選で出番は少なかったが「本当にいい経験ができた。涙が出るくらいうれしかった」と貴重な経験を積んだ。3年前に東京五輪が開催されていた時は、U―19W杯でハンガリーにいた。

 「ハンガリーで、(東京五輪の)米国との決勝戦を見た。『あ、戦えているな』って一番に感じた。米国は別次元の人たちだと思っていたけど違った。だから、パリでは金メダルを絶対に取りたい」

 指揮官とは「世界一のシューターになる」と約束を交わした。パリ五輪の初戦は米国戦。「良い勝負はできる」と自信を口にする。美しいシュートの軌跡を描き、ネットを射抜く。愛くるしい笑顔には無限大の可能性が詰まっている。

 ▼平下愛佳(ひらした・あいか) 2002年1月14日生まれ、愛知県長久手市出身の22歳。177センチ、70キロ。スモールフォワード。小学4年時に長久手ミニバスケットボールで本格的に競技を始める。中学時代はクラブチームのポラリスでプレー。愛知・桜花学園では主将を務めた3年時に全国高校総体(インターハイ)、国体、全国高校選手権(ウインターカップ)で優勝し、三冠を獲得。2020年にトヨタ自動車に加入。22年のW杯で日本代表デビュー。好きな食べ物は、りんごあめ。