インディカー 第5戦 インディ500 練習走行第5日 20日

インディアナポリス・モータースピードウェイ(IMS、米インディアナ州) ペン=天野雅彦 カメラ=松本浩明

 レイホールからスポット参戦する佐藤琢磨(47)が、今大会初めて、決勝を見据えた作業を始めた。ここまで予選を見据えた単独走行用の車体調整に専念。狙い通り予選トップ10入りを果たし、ようやく集団走行用の調整に着手した。走り始めの準備で30分近くロスしたものの、61周を走り、17番手のスピードを記録。最低限のことはできたもようだ。予選トップ3を独占したペンスキー勢が好調で、ジョセフ・ニューガーデン(33)=米国=が最速を記録した。

 たった2時間の練習走行で、琢磨がようやく決勝へ向けた作業をスタートさせた。なかなか準備が整わず、走り始めの約30分を失う厳しい滑り出しとなったが、その後はトラフィックと呼ばれる集団走行を試して貴重なデータを集めた。

 何とか61周を走った琢磨は「驚くべきことに、今回はきょうがトラフィックの中を走るのが初めて。(予選を見据え単独で)クリーンエアの中で走るのと(クルマの)感触が全然違っていた」。他車が生み出す乱気流の中での走行は、やはり別物のよう。

 2度の制覇をはじめ、15回目のインディ500となる琢磨は、予選を見据えてダウンフォース(気流で押さえ付ける力)を極限まで削り、独自のクルマづくりを進めた。今度は決勝に向けてダウンフォースをつけ、車体を安定させるよう調整を進める。

 ただ、今年は練習走行が雨にたたられ、ここまで十分な時間が取れずじまい。多くの選手が、途中から決勝に向けた作業も始めたが、琢磨はチーム内で唯一、予選用を極めることを選択。予選明けのこの日と、最終練習走行(24日)で、決勝用のクルマを仕上げるという賭けに出た。

 「やりたいと思っていたことは全てできなかったけど、燃料満タンから空になる走行は、ピットインしながらも1回はできた」と琢磨。最低限の作業は進められたようで、集めたデータと自身の豊富な経験、さらにベテランぞろいのエンジニアらの知見により、クルマを仕上げていく。

 「気になるのは決勝の天気。暑くなるのか、そうでないのか。予報を確認しながら、エンジニアらと『どんなクルマにして、どんなレースを戦うのか』を考えたい」。通算3度目の制覇に向け、粛々と準備を進める。