■先代の愛らしさは継承しつつ時代の進化を加える

7月5日に発売となったダイハツ新型「ムーヴ キャンバス」は、一見先代と見分けがつかないほどの超キープスタイリングでの登場となりました。その狙いはどこにあるのか、デザインを担当した福田さんと日野さんにお話を伺いました。

キャンバス・メイン
一見先代と変わりないが、すべてを新設計したスタイリング

●線や造形の要素を減らして「すっきり」を狙う

── まず始めに。新型には「かわいい」「すっきり」「洗練」といったキーワードがありますが、これ以外に造形上のコンセプトはありましたか?

「いえ、特別なコンセプトというものはなかったですね。初代は『愛らしさ』『キャッチーさ』など、非常にわかりやすい特徴を持っていましたので、それをさらに強調させたかった。キーワードはそのための方向性を示したものですね」

キャンバス・スケッチ
当初検討した3つのパターン。この後仕切り直しが行われる

── ここまで「変えない」という結論に至るには、どのような経緯があったのでしょう。

「そこはいろいろありましたね。非常に多くのスケッチから、当初は『かわいい』『すっきり』『ウキウキ』の3パターンに絞り、丸形や横長のランプなども検討しましたが、結局1周回って先代のイメージに戻りました。ただ、やはり時代に沿った進化として、先代の濃い『甘さ』を若干控えめにするべく仕切り直しをした。『おおらかさ』や『丸み』がそれですね」

── 先代との共用パーツはありますか?

「ひとつもありません。たとえばランプは前後とも上下に薄くなっていますし、先代で若干ツリ目だったフロントランプはより平行方向に変えています。サイドガラスも一見同じですが、やはり新たに起こしているんですよ」

キャンバス・サイド
サイドビューでは、ドア面の張りが強められ、ホイールアーチもシンプルな面になった

── フロントではグリルを下まで伸ばしたのが比較的大きな変更点です。

「『すっきり』を目指し、線や造形の要素を減らしたかった。カタチの単位を大きくしたいということです」

── サイド面ではキャラクターラインに設けられた「段差」と、張りのあるドア面が特徴的です。

「先代はキャビン側面が立っていて若干『頭デッカチ』だったのですが、ガラスの曲面を変えて30mmほど内側に倒し、キャビンからドア面をひとつの弧を描くようにしたかった。同時にキャラクターラインには深いレリーフを付けてライトキャッチさせ、その下のドア面の張りを強調しています。また、ショルダーのツートンカラーがキレイに流れるよう、ドアハンドルを少しだけ低くしました」

── 先代は前後のホイールアーチに明快なラインが引かれていましたが、新型にはありません。

「これも、先のサイド面を大きな弧で見せたいという意図を反映したものです。先代のアイコニックな表情は残しつつ『すっきり』『洗練』として、フレアにも余計な造形はしたくないと」

キャンバス・リア
ライセンスプレートを下部に移してスッキリさせたリアパネル

── リアハッチの角度は変更していますか?

「まったく一緒ではないですが、ほぼ同一の角度ですね。ただ、リアもサイド面同様に大きなカタマリで見せたかったので、ライセンスプレートを下部に移動させ、ハッチ全体を広い面で見せています」

── 「セオリー」ではボディサイドのメッキモールが特徴ですが、フロントグリルに付けなかったのはなぜですか?

「実は、当初はフロントグリルやリアにもメッキを付ける検討をしていたのですが、いわゆるカスタムグレードっぽくなってしまい、せっかくの丸さがスポイルされてしまう。ただ、フロントではフォグランプベゼル、リアではバンパー左右にメッキが使われており、これでサイドとのバランスは取れると判断しました」

キャンバス・セオリー
新たに加わった「セオリー」はサイドのメッキモールが特徴

── では最後に。こうした「ほとんど変えない」モデルチェンジでは、これまで販売的に厳しいケースが少なくありませんでした。今回はどのような勝算があって取り組まれたのでしょう?

「たしかにパッと見の変化は少ないのですが、たとえば面の合わせや段差など、『すっきり』『洗練』を目指して作りや質感を大きく引き上げています。結果としてよりいいモノになったと思いますし、新しいムーヴキャンバスになり得ていると確信しています。そうそう、イエローなど新しいボディ色にも注目して欲しいですね(笑)」

── しっかりした作り込みによる新たな価値観の創造ですね。本日はありがとうございました。

【語る人】
キャンバス・デザイナー
ダイハツ工業株式会社 デザイン部 第1デザイン室
主任:福田 学氏(写真左)

デザイン部 第2デザインクリエイト室
主任:日野 雅之氏(写真右)

(インタビュー:すぎもと たかよし)