■新たな交通のあり方が実践される路面電車の新規路線

●渋滞緩和に期待がかかる宇都宮ライトレール

現在建設が進められている栃木県宇都宮市・芳賀町を運行する次世代型路面電車、宇都宮ライトレール(LRT)の開業が2023年8月中となることで宇都宮市・芳賀町が合意したと、下野新聞が8月12日に報道しました。

開業を1年後に控えた宇都宮ライトレール

開業を予定している区間は宇都宮駅東口〜芳賀・高根沢工業団地間約14.6km。このうち約9.4kmは併用軌道(自動車交通との併用区間)となり、低床式路面電車タイプの車両(LRV=ライト・レール・ビークル)が最高速度40km/h、約6〜10分間隔で運行。所要時間は快速で約37分、各駅停車で約44分を予定しています。

沿線には宇都宮大学や作新学院大学などの学校やキヤノン、カルビー、本田技研工業などの工場、ニュータウンのゆいの杜があり、通勤・通学客の利用と沿道の渋滞緩和が期待されています。

本田技研工業付近に建設中の宇都宮ライトレールの軌道

また、JR宇都宮線と東北新幹線の間を通過して宇都宮駅の西側への延伸も構想しています。宇都宮駅の西側はバスの超過密路線として有名で、LRT開業による渋滞緩和効果は東側よりも高いと言われています。

●2度にわたる開業日の延期

宇都宮ライトレールは当初2022年3月の開業を目指していました。しかし立体交差区間での地盤補強工事やバリアフリー対策の強化が必要となったことに加え、新型コロナウイルス感染症の影響で地権者との折衝が遅れました。そのため2021年1月に開業日を2023年3月とすることが発表されました。

しかし、野高谷(のごや)交差点の立体交差工事が、渋滞防止のために交通規制範囲を縮小したことや、重機・人員の不足などによって遅延。その結果開業日を数ヶ月延期させる意向であることを下野新聞が2022年5月に報じました。そして8月12日の報道で2023年8月の開業が報じられたわけです。

工事が遅延している野高谷交差点付近

この報道では宇都宮駅西側の延伸を先として、桜通り十文字、護国神社、宇都宮環状道路、東北自動車道、大谷観光地の5案を宇都宮市が公表したと報じています。

●宇都宮ライトレールはどんな路線?

2022年3〜7月に建設区間の状況を確認してきました。その一部を紹介したいと思います。

宇都宮駅東口停留所はJR宇都宮駅と自由通路で直結しています。宇都宮駅東口停留所が設置される場所にはかつて宇都宮運転所という国鉄の一大車両基地がありました。しかし、JR東日本発足後に規模を大幅に縮小。この縮小部分に再び線路が敷かれることになりました。

宇都宮駅東口停留所を出てすぐの所から宇都宮大学陽東キャンパス停留所の先までは駅前通り(鬼怒通り)の中央部に線路を敷いた併用軌道区間です。宇都宮駅東口停留所〜宇都宮大学陽東キャンパス停留所の間には東宿郷、駅東公園前、峰、陽東3丁目の4停留所が設置されます。

宇都宮大学陽東キャンパス停留所の先で鬼怒通りから立体交差で南に離れ、ここから専用区間が始まります。最初の平石停留所に隣接して車両基地を設置。基地は将来の延伸を考慮していてかなり大規模なものとなっています。

平石中央小学校前停留所を過ぎると鬼怒川を渡る長い鉄橋を渡り、飛山城跡停留所に至ります。ここから清陵高校前停留所まではアップダウンが連続しています。

清陵高校前停留所から野高谷交差点付近までは清原工業団地の中を走り、道路の横を線路が並行しています。この区間には清原地区市民センター前、グリーンスタジアム前の2停留所を設置。このうちグリーンスタジアム前停留所には快速を普通が待避する設備が設けられています。

野高谷交差点付近から終点までは道路の中央に線路を設置する区間です。ゆいの杜西停留所〜芳賀町工業団地管理センター前停留所間は県道69号線宇都宮茂木線との併用で、途中にゆいの杜中央、ゆいの杜東、芳賀台の3停留所が設置されます。

管理センター前交差点からかしの森公園通りに左折して、かしの森公園前停留所を経て、終点の芳賀・高根沢工業団地停留所に至ります。この2停留所は本田技研工業の前にあって、通勤客の輸送が期待されている区間です。

●LRV「ライトライン」は全17編成が出揃う

宇都宮ライトレールで運用するLRVはHU300形「ライトライン」で17編成が導入されます。Hは芳賀、Uは宇都宮、300は3両編成であることを意味しています。

宇都宮ライトレールに導入されるLRV「ライトライン」

「ライトライン」は雷で有名な宇都宮・芳賀地区を意味する雷都とラインが由来。また、ライトはライトレールや「光」「明るい」などの意味が込められています。車体も雷をイメージした黄色をアクセントカラーとしています。なお、「ライトライン」のデザインは3案を作成し、沿線住民の投票により決定しました。

「ライトライン」の製造は新潟トランシスが担当。ドイツのブレーメン形をベースとした3車体連接構造を採用し、編成長は国内の路面電車としては最大級の29.52mです。

編成長29.52m、3車体連接構造の「ライトライン」

バリアフリー対策で車内は100%超低床で、フリースペースを各車両に設置しています。座席はクロスシートとロングシートを配置したセミクロスシート。

編成定員は国内の路面電車では最大の160名となっています。また、全てのドアにはICカードリーダーを設置。運賃箱は運転席付近に設置しています。

「ライトライン」は2022年6月までに17編成の搬入が完了。秋以降は本線の試運転を開始する計画となっています。

地元ではかなり注目されいる宇都宮ライトレールですが、国内でも路面電車の完全新規路線の建設は非常に珍しい例で、新しい交通のあり方として注目していきたいところです。

(文・写真:ぬまっち)