日々、新しい商品やサービスが生まれ、わたしたちの暮らしはどんどん豊かになっています。
今回は、〈地域おこし協力隊〉のみなさんにお住まいのまちの新ビジネスやサービスについて教えてもらいました。
それぞれのまちの新しい企業の試み、サービスは少しずつ地域に根づき始めています。オンラインで受けられるものもあるのでぜひチェックしてみてください。
コロナ禍だからできることをポジティブに捉え、いずれもてたらと思っていたアロマセラピーと漢方のリラクゼーションサロン〈薬草庵〉を9月にオープンした塚本あずささんを紹介します。
オーナーの塚本あずささん。
人口約3200人の下川町にコロナ禍の6月に2店舗、9月に1店舗新規オープンしました。
〈薬草庵〉の外観。
都内のサロンで経験を積み、「身近にある植物や食材を使って、自分の身体を自分自身でケアできるようになってもらいたい」という想いから、町内で採れる植物を生かした化粧品や精油をつくっている下川町に移住。
わずか1年もたたないうちにお店をオープンさせました。新型コロナウイルスが広がる前までは店舗を構えず、場所を借りて仕事をしていましたが、流行以降は場所を借りることも、人と会うことも難しいことに。
そんなとき、「家の裏に納屋があるけど、塚本さん使う?」という情報が飛び込み、自分の手でサロンをつくろうと決意します。
DIY事業を行う先輩移住者とタッグを組み、築90年の納屋が3か月で見事なサロンへと生まれ変わりました。
施術室の様子。
個人の体調に合わせてブレンドする薬膳茶。じわじわとファンが増えているそうです。
一方、家にこもる時間が長くなったことで不調を感じる方が増えるのではないかと考え、今まで以上にお客さまに寄り添ったサービスをという想いから、自宅でも受けられるオンラインセルフケア講座を計画中とのこと。
今後の〈薬草庵〉の展開は見逃せません。
information
AROMA & KANPO 薬草庵
住所:北海道上川郡下川町錦町34
営業時間:10:00〜17:00 ※完全予約制
休日:土・日曜
メール:aroma.kampo2019@gmail.com
Web:https://aroma-kampo.com/
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大石陽介 おおいし・ようすけ
1988年静岡県焼津市生まれ。大学卒業後、静岡県の小学校教諭として富士山の麓で8年間勤務。うち2年間は青年海外協力隊(JICA)としてモンゴルへ。世界自然遺産である『知床』での2年間の移住生活を経て、現在はSDGs未来都市に選ばれた北海道下川町を拠点にシモカワベアーズ(起業型地域おこし協力隊)として活動中。しもかわをぐるっとつなぐおもてなし宿の開業に向け準備を進める。第1弾として『ぐるっとしもかわ』というローカルガイドを期間限定でスタート。第2弾として、森の中でのサスティナブルキャビンを建設準備中。
2018年に発足した、〈矢板ふるさと支援センターTAKIBI〉。矢板のまちづくりのために地域活動の立ち上げ、地域での起業などの相談窓口として設置されました。
2019年矢板駅前にある旧大黒屋旅館の建物の一部を借りて、地域おこし協力隊でリノベーション作業を行いました。私もツナギが制服となるくらい作業に明け暮れました(笑)。
矢板市地域おこし協力隊の事務所も兼ねているスペースです。2020年には新たにリノベーションをし、地元の業者さんの協力も得てキッチン&カフェスペースを設けて、飲食業の開業を目指す人へのシェアキッチン機能も加わりました。
キッチンを借りて営業するカフェオーナーさんも登場し、おいしい匂いが漂うシェアオフィスとなっております。
また事務スペース側は共同で利用できるシェアオフィスとなり、利用者登録すれば自由に利用できます。矢板駅から徒歩3分という便利なロケーションなので、お近くにいらした折にはぜひお立ち寄りくださいませ。
information
矢板ふるさと支援センターTAKIBI
住所:栃木県矢板市扇町1-11-30
TEL:0287-47-7017
開所日:月〜金曜
開所時間:10:00〜16:00※土日利用は要相談
Web:https://m.facebook.com/takibiz.co/
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進藤菜央子 しんどう・なおこ
お料理すること、食べることが大好きで、そんな豊かさで満たされる暮らしができるまちへの移住を希望し、2019年2月より栃木県矢板市地域おこし協力隊として着任。矢板の食の魅力、古道や史跡が眠る歴史の魅力にハマり、〈矢板リトリート〉という、都会からの観光客を惹きつける新しい観光スタイルを構築中。任期後には、カフェ&ゲストハウス起業も目指している。矢板リトリートFacebook
「転勤、移住してきた。友だちが欲しい……」「同じ出身県の人と知り合えたら」「積極的に行動するほうではないけれど、楽しいことは好き」「せっかく秋田市に来たからには、秋田を思い切り楽しみながら生活したい!」「地元の方たちと交流したい!」 こういった想い抱く方たちの交流の場を「“秋田を体験しながら”楽しめたら」という熱い想いのもと、本年度から新たにスタートアップした事業があります。
上記にひとつでも該当したあなた!ここに参加するほかありません。
その名も〈あきた全国県人会〉。昭和感漂うネーミングセンスですが、地元・移住者などの枠を外し、ともに前向きに生活を楽しむ意味から名づけられました。
11月のイベントの様子。秋田舞妓に見入る子どもたちが印象的でした。
毎回テーマの異なる“旬な秋田”を秋田市で体験しながら、友だちもつくれる場として始まったイベント「AKITAいいね!しよう」では、新たに秋田市の住民となった「新・秋田人」を対象に、秋田舞妓を鑑賞したり、秋田産のお米でつくったおにぎりや、日本酒などを楽しんだり。秋田について勉強しながら、交流を図ります。
おいしい秋田に囲まれて自然と会話も弾みます。
自分の故郷を大事にしつつ、新たな土地で楽しく生活する一歩を築くきっかけとなればと、ボランティアで活動してくださるメンバーの愛情あふれるイベント。
さぁ、次のイベントではどんな秋田を体験できるのでしょうか。楽しみですね。
イベントの締めの合言葉は、みんなで「イイね!」です。
気になった方は、「まんず、参加してみてけれ〜!」(秋田弁:まず、参加してみよう)
information
あきた全国県人会Facebook
https://www.facebook.com/Akita.Emigration
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重久 愛 しげひさ・いつみ
「死ぬまでには一度は行きたい場所」で知られる鹿児島県与論島出身。2019年に縁あって秋田県秋田市にIターン。よそ者から見た秋田市の魅力や移住に至る経験を生かして、秋田市の地域おこし協力隊に着任。YOGAを生かした地域交流を図る事業や、移住者を受け入れる市民団体事業をプロデュース中。山菜採りにすっかり夢中に。自称「立てばタラの芽、座ればバッケ、歩く姿はコシアブラ」。
今年7月にオープンした〈315beer〉。
ロゴマークは秋田出身のアーティスト青木トキオさんデザイン。
オーナーの岩淵 俊さんは奥州市水沢出身。もともと地元でお店をやりたい気持ちがあり、5年前に見たドキュメンタリー番組でビールをつくれることを知り、3年前に前職を辞め県内や山梨のブルワリーに研修へ。
オーナーの岩淵 俊さん。古材を活用して仲間に協力してもらいながら内装をDIY中。
当初からバー営業は遅らせる計画で、始めは量り売りメインのイベント出店で売り上げを得る予定が、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、イベントは軒並み中止。
そんな中、NYの〈Other Half Brewing〉が〈All Together〉プロジェクトを始動。レシピを無料で公開し、各国のブルワリーがビールをつくって販売した収益の一部を飲食業・サービス業へと寄付することを目的としたワールドワイドなクラフトビールコラボレーション。
低コストでビールをつくるソースを提供できるように、レシピだけではなく、アートワークも無料で使用可能。
〈All Together〉のロゴ。
岩淵さんはこれに賛同して、最初に〈315 BEER All Together〉というビールを製造。「小規模で、地域に根づいてつくられ、地域を活性化するビール」が本来のクラフトビールの姿。
岩淵さんの一番の願いは「地元の人にビールの楽しみを伝えたい」ということ。
店頭販売の日はハンドライティングのボードが外に出ています。
ガラス越しに見える醸造所。
量り売りのため、マイグラウラー(ビールを持ち運べる水筒のこと)持参のお客さんも増えているとか。
仲間からいろいろなかたちでサポートを受け、バーのオープンを待ち望むお客さまの声も多く、すでに地元から愛されているブルワリー〈315beer〉。
おいしいビールだけでなく、地域のつながりも生み出してくれるすてきな醸造所です。
ビール好きな私もお家飲みを楽しんでいます。
もともと飲食店の空き物件をリノベーション。以前あったお店の看板が目印です。
information
315beer サイコービール
住所:岩手県奥州市水沢袋町6-26
※不定期の店頭量り売りのみ。グラウラーレンタルもあり。
近所の飲食店数店舗で〈315beer〉を飲むこともできます。
詳しくはSNSのDMでお問い合わせください。
※バーオープン時期は未定。
Web:https://315saikobeer.wixsite.com/315beer
Facebook:https://www.facebook.com/saikobeer/
Instagram:@315beer
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小川ちひろ おがわ・ちひろ
東京都品川区出身。大学で移民を学び、言語や異文化に興味を抱く。オーストラリア留学、台湾ワーキングホリデーと海外生活を経験。着任前は都内ギャラリーカフェに勤務。2018年5月岩手県奥州市地域おこし協力隊着任。今年度は台湾向けに東北のリアルライフスタイルやカルチャーシーンを伝えるウェブメディア立ち上げを目指し、自身も旅するように東北でしか味わえない経験を堪能中。
地方では閉校が増えるなか、役目を終えた小学校を生まれ変わらせるべくスタートした〈にかほのほかに〉。
のどかな田園風景のなかに佇む旧上郷小学校。
にかほの魅力をほかの地域に届け、ほかの地域から学ぶ。そんな学びあいの心を持った情報発信拠点として昨年始動しました。
現在はワークショップの開催や、元放送室を〈スタジオ129〉として活用。動画やラジオ番組の制作を進めています。
〈スタジオ129〉でのラジオ収録風景。
市民が交代でパーソナリティになるラジオ番組「あなたのおばんです」。
また鳥海山が目前に見える絶景を生かし再び人が集まる場所になるようにと、来年以降にはカフェや宿もオープン予定。
鳥海山が目の前にあり校舎からは絶景が望めます。
校舎のリノベーションも進行中です。できる限り使われなくなった材料を使い、自分たちの手で施工を行っています。たくさんの人の手が加わることで想いの込もった施設になると信じ、地道に作業しています。
ワークショップでは機材も使いこなせるように。作業を通じて人が出会う場にもなっています。
ワークショップで制作した家具をイベントで使用。廃材もデザインの力でおしゃれに。
カフェや宿がオープンした際にはぜひ訪れてみてください。
information
にかほのほかに
住所:秋田県にかほ市象潟町字小滝舞台64
Web:https://nikahonohokani.com/
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國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
私の住む広野町には、震災後スポーツで地域を盛り上げようと立ち上がったNPO法人があります。
まちのシンボルでもあるみかんから名前を取り、〈みかんクラブ〉の愛称で地域の方から親しまれています。
教室の内容もさまざまでバレーやサッカーといった団体競技から子どもたちの体操教室やかけっこ教室など本当に子どもからお年寄りまでたくさんの方が利用しています。
私も週1回子どもたちに体操や体ほぐしを教えています。そのほかにも、ヨガや太極拳などほんとに多種多様なスポーツや集いの場を提供しています。
震災後しばらくは放射線の影響により多くの町民が室内から出ない、いわば引きこもり状態でした。特に子どもたちは遊び場の安全面から長期間外で遊べない時期が続きました。
少しでも体を動かすきっかけになればと〈みかんクラブ〉が立ち上がりました。
今ではまちのみかん同様、多くの方から親しまれるクラブとなりました。
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大場美奈 おおば・みな
1993年生まれ。福島県いわき市出身。医療系専門学校を卒業後、委託職員として広野町入庁。そのときに広野町に恋をして、まちと共に生きることを決意。まちづくりの修業のため、一旦まちを離れて山形県南陽市地域おこし協力隊に着任。2019年4月に広野町起業型地域おこし協力隊に着任。現在は民間がつくるコミュニティースペース〈ちゃのまベース〉を立ち上げ、運営を開始。地域課題を企業というかたちで解決しながら会社設立に向けて奮闘中。
〈あきんどクリエイション合同会社〉は、2020年3月31日に猪苗代町で誕生しました。主な事業は、写真の撮影や動画の撮影・編集、YouTubeチャンネルの管理、音楽の録音、オンライン配信など。東北を中心に、全国各地で活動しています。
動画の編集中の様子。
トークイベントをオンラインで生配信している様子。
猪苗代町の“人”に焦点をあてて情報を発信していく猪苗代観光協会のYouTubeチャンネル『なすび隊長の発掘 猪人伝』の撮影・編集も担当しています。
「もともと撮影が好きで、好きなことを楽しんでいたら、どんどん夢中になって職業にしてしまった」と、話すのは代表の佐藤弘一さん。ご自身で、撮影・編集・録音をされます。
写真を撮るのは好きだけど、撮られるのは苦手と話す佐藤さん。本人を撮影しようとしたら、私のことを撮ってくれました。
現在のメンバーは5名。全員が猪苗代町出身・在住です。
最年少は19歳の村尾碧さん。今年の4月にメンバーに加わり、写真と動画の撮影・編集を担当しています。
「中学生の頃から写真が好きで、写真の撮影がしたくてこの会社に就職しました。毎日初めてのことだらけで、学ぶことが多い。でも新しいことに挑戦できることが楽しいです」と、笑顔で話してくれました。
今年の10月には、村尾さんが撮影・編集した映像が、映画祭で上映されたそうです。
村尾さん個人でも、Instagramで猪苗代の情報発信アカウント「イナスタグラム」を立ち上げて運営しています。
猪苗代から日本のみならず世界中に情報を発信している〈あきんどクリエイション合同会社〉の今後の活躍に目が離せません!
information
あきんどクリエーション合同会社
TEL:080-2808-7233
Mail:akindo.creation@gmail.com
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遠藤孝行 えんどう・たかゆき
福島県の会津に位置する「猪苗代町」で地域おこし協力隊をしています。もともと東京でエンジニアをしていたこともあり、ITのノウハウを活かして「ふるさと納税」と「猪苗代湖の環境保全」を担当しております。現在、協力隊3年目となり、情報発信・教育・観光事業を主とした株式会社アウレを起業しました。
text & photo
Yosuke Oishi, Naoko Shindo, Itsumi Shigehisa, Chihiro Ogawa, Saki Kunishige, Mina Ohba, Takayuki Endo
大石陽介/進藤菜央子/重久 愛/小川ちひろ/國重咲季/大場美奈/遠藤孝行