こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

蚊やブヨに悩まされる季節がやってきました。虫除け、虫刺されに効果のある「ドクダミ」は、今が収穫どき。

コロカルでも過去に野草の「虫除け&虫刺され薬」や「チンキ&軟膏」のつくり方をご紹介しましたが、虫刺され薬のつくり方として一番ポピュラーなのが野草をアルコール漬けにしてエキスを抽出する「チンキ」という方法。加水したり、保湿効果のあるグリセリンなどを加えることで美白化粧水としても使えるすぐれものです。

半日蔭に生えたドクダミの写真。

ドクダミは、生葉をすりつぶして虫刺されに擦りつけるだけでかゆみが和らぎます。

ただ、あるときこのレシピを見た友人から「肌が敏感で、アルコールは刺激が強く肌が荒れてしまう」と相談されました。

そこで考えついたのが「蒸留」です。これなら肌への刺激が少なく、いろんな人が使えるのでは……? と考え、さっそく実験してみることにしました! 

(蒸留水でも、植物によっては濃度が高く出るものがあるので注意してご使用ください)

ドクダミを蒸留する

ガラスの蒸留器にセットされたドクダミの花の写真。

蒸留とは、植物を煮出したり蒸したりすることで植物のエキスや芳香成分が蒸気のなかに溶け込み、その蒸気を急激に冷却することで液化するという仕組み。

取り出した液体にはさまざまな効能があり、化粧水やヘアケアなどに活用することができます。

今回は、「梅の花のアロマウォーターづくり」の際にご紹介したガラス製の蒸留器と、家庭用のホーロー鍋を使って蒸留していきます。

(1)ガラス製の蒸留器を使って蒸留してみる

化粧水として使いたかったので、美白効果が高いといわれているドクダミの白いお花だけを集めて贅沢に蒸留してみました。

ガラスの蒸留器にセットされたドクダミの花を上から見た写真。

庭に生えているドクダミの花をさっと水洗いして蒸留器へ。熱が加わると一気にかさが減るので、花は多めに入れるくらいでOK。

ビーカーの周りにドクダミの花を敷き詰めて水を入れ蓋部分に氷をセッティングしたら、氷を溶けにくくするためにさっと塩をふります。準備が整ったらスイッチオン!

蒸留器を熱して、ドクダミの花を煮だしている写真。

お湯を沸騰させると、ドクダミのエキスを含んだ蒸気が部屋いっぱいに広がります。

ドクダミの香りというと青臭い印象で嫌われがちですが、集めた蒸留水は、青臭さがなくなり、フレッシュで爽やかな香りがしました。(でも、ドクダミらしさはしっかりと残っているから不思議です!)

30分程でドクダミのエキスが集まった蒸留水ができあがりました。

(2)ホーロー鍋と耐熱容器で蒸留してみる

「蒸留してみたいけど、家に蒸留器がない……」という方もご心配なく。キッチンにある鍋や蒸しザルでも、簡単に蒸留できます。

こちらでは、ドクダミの葉っぱを原料に蒸留水をつくってみたいと思います。

ホーロー鍋にドクダミの葉っぱを敷き詰めて水を注いている様子の写真。

煮ている間に耐熱容器がカタカタと揺れて、中心からずれてしまうことも。蒸留水をこぼさないように容器を固定したりと、ちょっとコツが必要です。

鍋の中心に耐熱容器を置き、周りにドクダミの葉を入れます。耐熱容器の周りに葉っぱがひたひたになるくらいまで水を入れ、鍋蓋を逆さにして被せ、その上に氷を置いたら火にかけて、ドクダミを煮出します。こうすることで、立ち上った蒸気が蒸留水となり裏返した蓋の取手を伝って、耐熱容器に集まってきます。

ホーロー鍋の蓋を逆さにして、蓋の上に氷を置いている写真。

蒸気を急冷するために氷を使います。なければ保冷剤でもOK。

強火でボコボコ沸騰すると、鍋のなかで耐熱容器が揺れて割れてしまうことがあるので、弱火で試してみてください。

耐熱容器が割れるのが不安な方は、蒸しザルの上に耐熱容器とドクダミの葉を置いて容器が揺れないようにするなど工夫してみてください。

20分ほど煮出して、無事に蒸留水ができました。

蒸留水を溜めたビーカーの写真。

さて、蒸留して気になったのが香りの変化です。

ドクダミの独特な匂いのもととなる「デカノイルアセトアルデヒド」は強力な殺菌作用があるといわれており、お肌のトラブルを解決に導く重要な成分です。けれど、ドクダミを乾燥させると独特の匂いと共に殺菌効果が失われるため、この成分を活用したい場合は生葉を使うことが勧められています。

今回、蒸留でドクダミ特有の青臭さがなくなったことで「デカノイルアセトアルデヒド」に何か影響があったかも? と思い調べてみました。加熱によって成分が変質する可能性はあるそうですが、定かではない様子。確実に殺菌効果を高めたい場合は加熱せず、アルコールに漬け込むチンキのほうが向いているかもしれません。

とはいえ、蒸留してもさまざまな効能は十分残っているはずなので化粧水としての役割を果たしてくれると期待しています! 

ドクダミチンキとドクダミ蒸留水を比べてみた!

蒸留水のスプレー瓶と、チンキのスプレー瓶を手に持っている様子。

左が蒸留水、右がチンキ。チンキは1年間ホワイトリカーに漬けていたので、成分が染み出してきれいな琥珀色になっています。

ドクダミ蒸留水は無事に蒸留できましたが、使い心地はどうでしょうか。

せっかくなので、つくったチンキと蒸留水のそれぞれの使い心地や効果を実験してみました!(個人的な主観なので、参考までに)

(1)化粧水で比べてみる

ニキビなどを防ぎ、肌のコンディションを整えてくれるといわれるドクダミ化粧水。

まずは、今回つくったドクダミの蒸留水を化粧水として使ってみます。加水などせず、そのまま使えるのがうれしいポイント。

顔に吹きかけると、まずドクダミの青臭さの抜けた爽やかな芳香が鼻に抜け、手で馴染ませると少ししっとりします。

使い心地は、さらっとした軽さがあって、お風呂上がりにシュッと顔に吹きかけるととても気持ちがいいです。

ざるにドクダミの花を集めている様子。

娘がドクダミの花の収穫を手伝ってくれました。

続いて、去年漬け込んだドクダミチンキを化粧水として使ってみます。

そのまま吹きかけると、アルコールが揮発するスーッとした清涼感を感じます。効果はありそうですが、ちょっと刺激が強いかも……! 

顔の皮膚は薄く、刺激に弱い部位。チンキ:水:グリセリンを1:4:0.1の比率で薄めて使用してみるとぐっと使いやすくなりました。

そのまま使える蒸留水に比べるとちょっと手間かもしれませんが、化粧水らしいとろりとしたテクスチャーになり、畑作業で火照った肌をひんやりクールダウンしてくれます。

化粧水を手づくりした場合は、どちらの化粧水も冷蔵庫で保存してください。また、初めて使用する際はパッチテストを行うことをおすすめします。

頬に手をあてて、笑っている女の子の写真。

蒸留したドクダミ化粧水、娘はとても気に入ったようです(笑)。

(2)虫刺され薬として比べてみる

蚊に刺されてかゆい部位に、蒸留水とチンキを吹きかけてみます。

蒸留水はやさしい使い心地で、かゆみがじんわり和らぎます。低刺激なので、小さなお子さんにも向いているかもしれません。

続いて、チンキの原液を患部に吹きかけます。スーッとした使い心地は市販のかゆみ止め薬と同じくらいの爽快感があり、あっという間にかゆみが引いていきます。手づくりとは思えないほどの効果! 

かゆみへの効果を比較してみると、チンキのほうが圧倒的に効果を感じました。かゆみ解消の即効性、効果の持続時間もチンキのほうが上。今回使用したチンキが1年間漬け込んだものだったので、ドクダミの有効成分がしっかり溶け出していたからかもしれません。

使ってみた感触としては、蒸留水は肌にやさしく、気軽に使うのに向いていて、チンキは効果は強いけれど、肌の状態によっては精製水で薄めて使うなど、刺激を和らげるアレンジをして使うのがベター、という感じでしょうか。

草むらでドクダミの花を摘んでいる女の子の写真。

草むらで花を摘むのが好きな娘には、虫除け&虫刺され薬として低刺激のドクダミ蒸留水を使っています。

私は、蒸留水を化粧水に、チンキを虫刺され薬として使っています。

蒸留水もチンキも、髪と頭皮環境を整えるヘアスプレーとして、お部屋やお布団、衣類の消臭のためのルームスプレーとして、入浴剤としても活用しています。梅雨でジメジメした空気をスッと爽やかにしてくれるのでとても気に入っています。

暮らしのさまざまなシーンで活用できるドクダミの蒸留水&チンキ。この季節、あのハート型の葉っぱを見つけたら化粧水や蒸留水づくりを試してみませんか? 

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畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森