コロナ禍でますます注目を集めている「ホットサンドメーカー」


コロナ禍の2020年、人気沸騰したのがキャンプや、ベランダでアウトドア気分を楽しむベランピングなどのアウトドアのアクティビティ。キャンプ飯については去年この連載でも書いたが、アウトドアクッキングで急速に人気が高まったのが、ホットサンドメーカーを使った料理である。

クックパッド食の検索サービス「たべみる」でも2020年に検索頻度が急速に上がり、2020年は2019年の2・22倍、2021年には前年の約2倍と、倍々ゲームで増えている。

ホットサンドメーカーがアウトドアに関連して使われていることは、クックパッドが配信する『FoodClip』2020年6月9日の「料理のニューノーマル探索」で、バーベキューとホットサンドを組み合わせた検索頻度が、2020年2月〜5月に前年同期比952パーセントも上昇していることからわかる。

ホットサンドメーカーのレシピ本も出ている。コロナ禍での人気沸騰をもとにつくったと思われるのが、『なんでも美味しくなる魔法の道具 ホットサンドメーカーにはさんで焼くだけレシピ』(西荻ヒュッテ監修、主婦の友社)で2021年2月に刊行。ホットサンドだけでなく、「焼き肉まん」「焼きシュウマイ」「チーズ餃子」「ハンバーグ」「チキンソテー」「瓦そば風」「焼き栗」などさまざまな料理が、「小さなフライパン」扱いで簡単にできるらしい。

ホットサンドも作れるけど、それ以外の料理もできる、という発見が、ホットサンドメーカー人気につながっているようだ。何しろアウトドアでは、できるだけ軽い装備でいろいろなものを作って食べたい人が多いだろうから。

しかし、最大の魅力はやっぱり、ホットサンドを作れることだ。ここ数年、パンの間にぎっしり具材を詰め込んだボリュームサンドが人気だが、たっぷり詰める点では、熱で水分が蒸発するため圧縮できる、そして熱々を楽しめるホットサンドの魅力は捨てがたい。

ホットサンドに特化した使い道を集めたのは、「ごちそうおにぎり」で人気になったインスタグラマー、Tesshiさんの『もりもりホットサンドと野菜ごろごろスープ 元気が出るよ!』(KADOKAWA)で、コロナより一足早く2019年3月に刊行されている。

テッパンで人気だろうと思われる「ダブル卵とハムとチーズのホットサンド」は、ゆで卵とスクランブルエッグをキャベツ、、キュウリ、ハム、チーズとともに挟む。ハンバーグややきとり、コロッケを挟むレシピもある。おやつっぽいものとしては、「いちとバナナカスタードのホットサンド」や「アップルパイ風ホットサンド」などが紹介される。

ホットサンドブームの始まりはいつ?


ホットサンドブームの始まりは、2015年10月に『マツコの知らない世界』(TBS系)で取り上げられたこと。人気になったのは、10年以上続くパンブームの影響に加え、そのボリューム感と断面のカラフルさが、インスタ映えすることも大きいのではないだろうか。また、1品で主食・主菜・副菜まで兼ねられる手軽さも、多忙な人が多い現代にふさわしい料理と言える。

今回のブームは二度目。最初は1970年代だ。ホットサンドメーカーそのものは、ブラジルのバウルー村で生まれた調理道具で、ブラジルでは道具名として通用する。このパン焼き器を現地で知った日本人男性が、お土産で持ち帰ったことがそもそもの始まり。日本では1968年頃、新潟県燕市の田巻金属株式会社が日本のパンに合わせた製品を開発し、売り出す。それが各地の喫茶店に採用されたのである。ちょうど喫茶店業界では各店が生き残りをかけ、洋食メニューの軽食を次々と導入した時期でもあった。

私がホットサンドに出会ったのは、ブームが一段落した1980年代半ば。高校から大学時代にかけて通った喫茶店「喜多郎」で出されていたのだ。当時のメニューは、コンビーフ&コーン、ハム&チーズの2種類だったと思う。私は熱々で、耳を切り落とした端っこがカリッとしているサンドイッチがたちまち気に入り、しょっちゅう頼んでいた。切り落とした耳もマヨネーズをつけて添え、ポテトチップスも付け合わせにする炭水化物だらけのメニューだったが、食べ盛りにはそれがうれしかった。

喜多郎は、残念ながら経営が成り立たなくなって私が20歳頃に閉店。ホットサンドを食べられる店を他に知らなかったので、未練を抱きつつも遠ざかっていた。今みたいに、検索で簡単に情報を得られる時代ではなかった。

30歳で上京し、銀座の「北欧」という老舗喫茶店にホットサンドメニューがあるのを知ると、そこで食べるようになった。北欧は場所を移転したが、今も新橋に店がある。キャベツのせん切りがたっぷり入ったヘルシーメニューだが、中年を過ぎて1人前をおやつに食べるのはちょっときつくなってきた。

家庭で、多様なホットサンドが人気になっていることは、ホットサンドファンとしてはうれしい。ヘルシーかつボリューミーという特徴を持ったレシピを多彩に楽しめるのは、自作するからこそ。こんな時代だからこそ、こういう小さな幸せが日常を豊かにしてくれるのだ。

画像提供:ピクスタ

阿古真理(あこ・まり)


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©植田真紗美

1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』、『母と娘はなぜ対立するのか』、『平成・令和食ブーム総ざらい』、『日本外食全史』など。