儚げに透きとおるやわらかな寒天に季節替わりの蜜を合わせた、大極殿本舗 甘味処 栖園(せいえん)の「琥珀流し」は、京都を旅するならぜひ味わいたい憧れ甘味。ガイドブックでおなじみの六角店から徒歩5分の場所にある本店にも、じつは同じ名前の甘味処 栖園があります。カジュアル&モダンな空間で、琥珀流しの本店限定フレーバーや、季節の甘味、手みやげ選びを楽しみましょう。

創業130年を超える和菓子の名店

創業1885(明治18)年の大極殿本舗は、京都でいち早くカステラ(春庭良)づくりをはじめた老舗和菓子店。平安神宮への献上菓子「大極殿」や、花かごを表現した冬の「花背」、カステラ生地のやわらかい「京桂川 若あゆ」などの銘菓で親しまれています。本店へのアクセスは、阪急烏丸駅から徒歩1分、地下鉄四条駅からは徒歩5分ほど。大丸京都店の東隣です。

甘味処 栖園といえば、築150年の時を経た京町家の六角店にあることが知られていますが、2019年、こちらの本店内にも甘味処 栖園がオープンしました。和菓子づくりをしていた工房を「和でも洋でもない、やわらかい雰囲気に」改装。壁には染色家による現代アートが飾られ、BGMにはジャズが流れるモダンな空間です。ほのかな光が差し込む坪庭には、水をたたえた鉢が置かれ、金魚が悠々と泳いでいます。かつてお菓子のすり鉢として使われていたものだそう。

本店だけで味わえる琥珀流し

甘味処 栖園の代名詞的メニューといえば、「琥珀流し」。寒天の名産地・岐阜で手作業でつくられた糸寒天を、ゆるく炊いて口あたりのなめらかな寒天に仕上げ、月替わりの蜜を合わせています。本店では六角店と同じ蜜のほか、本店だけで味わえる蜜の2種類が用意されています。ふたつを並べたときの色彩の美しさまで考え抜いて12か月の蜜を完成させたそう。

こちらは7月の「赤紫蘇」。京漬物・しば漬けで名高い京都大原の赤紫蘇でつくる蜜は、レモン汁を加えることで鮮やかな赤紫色に。赤紫蘇のゼリーが宝石のようにきらめきます。

ここで、本店と六角店のラインナップをご紹介しましょう。

<本店>
1月:紅糀甘酒 2月:カスタード 3月:桜花 4月:はちみつ 5月:トマト 6月:ヨーグルト 7月:赤紫蘇 8月:生レモン 9月:カラメル 10月:栗 11月:実生柚子 12月:深煎りきなこ 

<六角店>
1月:白みそ 2月:ココア 3月:甘酒 4月:桜花 5月:抹茶 6月:梅酒 7月:ペパーミント 8月:冷やしあめ 9月:葡萄 10月:しるこ 11月:柿 12月:黒みつ

本店はミルク系が多いのが特徴です。人気の「桜花」は、六角店では4月ですが、本店ではひとあし早い3月に登場。「かわいくて、きれいで、おいしいものを」と琥珀流しを考案した女将の芝田泰代さんは、それぞれを桜の開花になぞらえて「遅咲き」「早咲き」と呼んでいます。

秋が深まる11月は「実生柚子」。濃厚な味わいが特徴の柚子の原種を使い、果実と皮、白いワタも一緒に搾って仕上げる蜜です。緑、黄色、赤色のゼリーは、錦秋の彩りを表現しているそう。

ぜんざいは女将さんのいちおし

ぜんざいは、女将さんが「うちのは日本一やと思うてます。小豆が好きな方にぜひ召し上がっていただきたい」と話すとおりの逸品です。京都の丹波大納言小豆のなかでも、3L以上(!)の大きくて粒ぞろいの「春日」を使用。大極殿本舗の職人が考案したという独自の炊き方によって小豆の形が一粒一粒きれいなままなので、お汁が澄んでいます。食感はふっくらとしていて、皮までほろりとほどけるやわらかさです。

イートインのメニューにはほかに、抹茶と生菓子や、特製わらび餅も。6月から9月には、かき氷もお目見えします。

冷やしておいしい、夏限定レースかん

夏の手みやげとしておすすめなのは、5月から9月にお目見えする「レースかん」。錦玉羹(きんぎょくかん)という寒天菓子で、後味がよくなるようにと氷砂糖を使い、レモンのリキュールを合わせています。輪切りにしたレモンがまるでレースのように可憐です。持ち帰り専用の商品ですが、栖園では夏の間、刻んだレースかんをトッピングしたかき氷が味わえますよ。

四季の移ろいが愛おしくなる、そんな和菓子処で、心うるおうひとときを過ごしてみませんか。