本年度アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートを果たしたレオニー・ベネシュ主演のドイツ映画『ありふれた教室』より、本編映像と、イルケル・チャタク監督からの日本公開に向けたメッセージ動画が解禁された。

 本作は、現代の中学校を舞台にした学園もので、このジャンルのポジティブなイメージを根こそぎ覆すサスペンス・スリラー。ある新任女性教師の視点で進行する物語は、校内で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと激しくうねり、わずか数日間で学校の秩序が崩壊してしまう異常な事態へと突き進んでいく…。

 第73回(2023年)ベルリン国際映画祭パノラマ部門でワールドプレミアされ、ダブル受賞を果たしたのを皮切りに、ドイツ映画賞主要5部門(作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞)の受賞を達成。さらには本年度アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートを果たした本作は、これが日本劇場初公開となるイルケル・チャタク監督の長編4作目にあたる最新作だ。

 チャタク監督は教育分野で働くさまざまな人々へのリサーチを行い、自らの子供時代の実体験も織り交ぜてオリジナル脚本を執筆した。誰にとってもなじみ深い学校という場所を“現代社会の縮図”に見立て、正義や真実の曖昧さをサスペンスフルに描ききった。

 主演のレオニー・ベネシュは、次々と重大な選択や決断を迫られるカーラの葛藤を生々しく体現した本作でドイツ映画賞主演女優賞の受賞を果たし、ヨーロッパ映画賞女優賞にもノミネートされた。

 イルケル・チャタク監督はメッセージ動画で、「ドイツのハンブルクで次回作に取り組んでいます。日本でお会いしたかったのですが、かないませんでした。映画を気に入り、評判を広めてくれたらうれしいです」と語った上、、最後は日本語で「ありがとうございます」とあいさつ。

 解禁となった本編映像では、「学校新聞」を作成中の生徒たちが盗難事件のことで、カーラにインタビューするシーンが切り取られている。「なんで生徒が疑われたんです?」と、生徒たちは学校、教師に対する不信感をあらわにした。しまいには「学校には監視カメラが?」とカーラに問いかける。盗難事件をめぐる学校側の対応がうわさとなり広がり始めていたのだ。これまで良好な関係と築いてきたと思われるカーラと生徒たちだが、もはや崩壊の危機にひんしていた…。部屋を出たカーラは、すれ違う職員のブラウスに違和感を覚え、後ろをついていく。しかし、どうも様子がおかしい。カーラが覚えた違和感とは…。孤立無援の窮地に追いやられていく様子がうかがえるシーンとなっている。

 カーラ・ノヴァク役を演じたレオニー・ベネシュは「本作の脚本に心を動かされました。非常にエキサイティングな物語と思ったのです」と語り、「自分自身の中にカーラ・ノヴァクという人物を見たわけではないし、役柄に惹かれたわけでもなかった。ただ興味深かったのです。賢い人物が作品を手がけているということを知り、監督がどんなことを考えているか知りたいと思いました」と、本作への思いを明かした。

 さらには、「『ありふれた教室』は社会に存在するディベート文化に対する批判なのだと思います。」と作品を分析し、「カーラ・ノヴァクは、全てにおいて正しい行動で対処したい人物ですが、様々な理由で失敗を繰り返す。それは意図的に、また無意識のうちに誤解されることから起こる。チャタク監督は、私たちの<今>に存在する根本的な事柄を捉えていると思います」と述べた。

 映画『ありふれた教室』は公開中。