クリエイターの発掘・育成を行う短編映画制作プロジェクト「ミラーライアーフィルムズ」の最新シーズン公開にあわせ、ドコモの映像配信サービスLemino(旧dTV)内に「ミラーライアーフィルムズ」チャンネルが開設。“毎週金曜は、ミラーライアーフィルムズ短編映画の日。”として、Season1〜Season4のオリジナル作品・関連作品などが配信中だ。また本日5月31日より劇場公開となるSeason5が、劇場公開日から約1カ月後という異例のスピードで、7月5日から順次配信開始することも決定。竹中直人監督作『たてこもり』や、漫画家・大橋裕之の初監督作で『変哲の竜』など、過去シリーズ同様に注目すべき監督の短編が並び、出演者にはお笑い芸人・小説家の又吉直樹や、山田孝之、横浜流星、伊藤沙莉、山下幸輝など超豪華布陣が集結したシリーズ最新作となっている。

 今回、Leminoですでに配信開始されているSeason1より、武正晴監督『暴れる、女』、枝優花監督『petto』ほかの4つの作品について、映画ライターによる見どころ紹介コメントが届いた。いずれの作品も全て無料で視聴することができるので、ライターコメントを読んだ後に本編をチェックしてみてほしい。

■配信作品(5)『暴れる、女』(「MIRRORLIAR FILMS Season1」収録作品)

短編だから大胆な構成で。『暴れる、女』は名コンビによる男女逆転

 第39回日本アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀主演女優賞を受賞した『百円の恋』コンビ、武正晴×足立紳による「闘う女」の一面を描いた本作。主演が友近というのもベストキャスティングで、出所した瞬間に映る赤いヒールから、タダモノではない貫禄を漂わせるのです。ロングコートの中から見える胸元のざっくり開いた赤いワンピースだけで強さを表現し、雷雨の中の女・響子のロングショットから、振り向きざまのタイトル表示。これこそが『暴れる、女』=「雷神」という意味にも捉えられます。

 では暴れるとは具体的にどういうことなのか。

 この後、登場する響子の恋人の子分と思われる男・友広(渡辺大知)をはけ口として、刑務所で抑圧されていた欲求を全て満たす=暴れる、という意味なのです。

 思えば、脚本を担当した足立紳は恐妻家と自身で公表し、妻との関係を綴った自伝小説を出版。その後、監督作として『喜劇 愛妻物語』を撮るなど、強い女性を間近で見ている人物。だからか響子と友広の関係は不快というより滑稽に見えてくるのが足立節。興味深いのは通常、物語のクライマックスになるシーンがエンドロール扱いになっている点。これこそがベテラン監督、武正晴ならではの“短編だから挑戦しよう”という発想と大胆さで、描きたいのは「欲望の放出」であるという分かりやすいメッセージだったのです。(文:伊藤さとり 映画パーソナリティ)

・作品情報&配信情報

 模範囚を演じきり、仮出所できることになった響子。彼女を出迎えたのは、響子の恋人に頼まれた男、友広だ。車に乗り込んだ彼女は、食欲や性欲、あらゆる欲望を開花させる。
監督:武 正晴 脚本:足立 紳 出演:友近、渡辺大知 / 時間:15分

■配信作品(6)『petto』(「MIRRORLIAR FILMS Season1」収録作品)

作家性を一瞬で浴びる作品。毒っ気と美しさが共存する『petto』

 短編にはインパクトも大事。

 それは視覚的にも脚本的にも「驚き」があるほど面白いし、別に物語を観客に理解してもらう必要もないと個人的には思っています。短い時間の中で何をどう表現するかに作家性が問われるのが短編。けれど見終わった後に何かしらの感情が芽生える余韻が欲しい。それを理解しているような15分の作品が本作『petto』であり、枝優花監督その人なのです。

 ちょうど社会勉強と言える年齢が学校生活を送る小、中、高校時代。集団生活において調和の意味を知り、協調性を学び、他者と共存する上で、ある程度の我慢まで覚えるのが10代です。そんな多感な年頃の高校生を主人公に、将来の夢を親に言えず思い悩む少女・春乃(吉田美月喜)が、学校に来ずにパパ活をしている噂が出ている幼馴染で憧れの存在、愛美子(横田真悠)の秘密を知ったことで、思考が広がる様子を表情だけで見せる本作。

 確かに10代の脳は一度、思い込むとなかなかその考えが外れない。けれど崇拝している人の言葉だけで考え方も180度変わることだってある。ここに着目し、政治家が決めた法律に疑問を持ちながらも従順な大人達に皮肉も込めたシーンをほんの少し散りばめ、柔らかな光の中での高校生同士の日常の会話から変化を見せる枝監督の手腕に脱帽します。“人には意思があり、自分の幸せは自分が決める”、可愛らしいハミングによるエンドロールとは裏腹に、そんな言葉がこの映画から聞こえてくるのです。(文:伊藤さとり 映画パーソナリティ)

・作品情報&配信情報

 高校2年生の春乃は親の希望通り国立大学進学を目指しているが、本当はトリマーになりたい。しかし、ずるずると本音を打ち明けられずにいた。そんな春乃のもう一つの悩みは、幼馴染がパパ活しているという噂だった…。
監督・脚本:枝 優花 出演:吉田美月喜、横田真悠、河井青葉、渡辺 哲 / 時間:16分

■配信作品(7)『充電人』(「MIRRORLIAR FILMS Season1」収録作品)

へそから電源ケーブルが生えました 奇想天外コメディーの衣をまとった注目の現代風刺劇『充電人』

 朝起きてみたら、まるでへその尾のような電源ケーブルが腹から生えていた。『鉄男』的スチームパンク風? それともデヴィッド・クローネンバーグ監督的肉体変容ホラー? 否、西遼太郎監督の『充電人』は、そのタイトルを“じゅうでんにんげん”ではなく“島人”ならぬ“じゅでんちゅ”と読ませるところからもわかる様に、超ポジティブな奇想天外コメディーだ。

 先に『充電人』というタイトルが思いつき、そこからストーリーを広げていったという西監督。ユニークすぎる発想力もさることながら、あえてタイトルを“じゅでんちゅ”と読ませたり、充電人間になる主人公を轟雷太というエレクトリックな名前にしたり、お笑い力もかなり高い。

 腹から生えている電源ケーブルを初めて目にした第一声が「何だこれ!?」ではなく「キ、キモ!」という至極真っ当かつリアルな反応だったり、ネット上の知恵袋に書き込んで原因を探ろうとしたり、放電パワーでトースターや掃除機を無駄に動かしたり…。雷太のリアクションや行動は滑稽ながらも共感大。

 全編を通して貫かれるユーモアから生まれる笑いは、物語に現実味を補強する機能を備えている。それは「腹から電源ケーブルが生える」という荒唐無稽な設定を、すんなりと受け入れさせる説得力にも繋がる。壮大なフィクションに些細なリアルを混ぜ込むことで、ウソを本当にする。西監督の個性的なストーリーテラーぶりはなかなかのものだ。

 描き方によっては“充電人間”という設定は出オチになる危険性もあるが、雷太の恋愛というサイドストーリーを同時進行させることで、“充電人間”設定を上手く活かす。クライマックスでは、スマホ中毒の現代人に対する警鐘ともとれるようなハッとするセリフも。もしかしたら『充電人』は奇想天外コメディーではなく、風刺の効いたブラックコメディなのかもしれない。ちなみにスタッフロールにも粋なお遊びがあるので、最後まで笑って見てほしい。(文:石井隼人)

・作品情報&配信情報

 目覚めるとおへそから電源ケーブルが生え、充電がないと生きられない「充電人」になってしまった轟 雷太。そんな矢先、雷太が恋心を抱く神名瑠輝からデートのお誘いが!
監督・脚本:西遼太郎 出演:本田響矢、永井理子、鈴木孝志、牛尾八角子、尾本卓也、奥田美優 / 時間:13分

■配信作品(8)『B級文化遺産』(「MIRRORLIAR FILMS Season1」収録作品)

マンホール、信号機、電信柱がトランスフォーム? 命を狙われるスケボー青年の悲劇 米アカデミー賞公認映画祭でも上映『B級文化遺産』

 米アカデミー賞公認の映画祭でも上映された針生悠伺監督による『B級文化遺産』は、8分間の疾走劇。マンホール、電信柱、信号機、踏切など近代生まれの“B級文化遺産”から命を狙われる男の逃走劇を描くディストピアムービーだ。

 「B級文化遺産協会」と名乗る、機械的な女性からの電話を受けたスケートボーダーのアキラ。電話の主が言うには、今踏んでいるマンホールの蓋は「B級文化遺産」に登録されているらしい。そんな貴重な“遺産”を踏みつけた罰として、アキラは3分間その命を狙われるという。

 するとマンホールが突如、殺りくマシーンにトランスフォーム! 銃器となり、容赦なく弾丸を飛ばしてくる。理不尽なデスゲームに参加せざるを得なくなったアキラはスケボーを相棒に3分間の逃走に身を投じるが、電信柱、信号機、踏切が次々と殺戮マシーン化。街中はB級文化遺産で溢れていた…。

 スケートボードというアイテムが、銃撃から逃れるアキラの3分間にわたる疾走のテンションを高める。それに呼応するかのように、空撮を含む創意工夫を凝らしたショットを小気味よい編集で繋げ、逃走劇のスピード感を高める。セリフのやり取りがほとんどない所も、スピーディーなテンポを乱さぬ効果を生んでいる。殺りくマシーンにトランスフォームしたB級文化遺産たちのVFXも秀逸だ。

 演出・撮影・編集、そのすべての重点がスピード感に置かれており、ひたすらに突っ走るアキラのテンションを盛り上げる。そして理不尽の極みに着地する、まさかの結末…。上映時間8分というショートショートの利点を上手くすくい取ったアイデア勝負の快作だ。(文:石井隼人)

・作品情報&配信情報

 “B級文化遺産”に登録されているマンホールを踏んでしまったスケーターのアキラは、そのペナルティとして、謎の組織から命を賭けたゲームに強制的に参加させられる。
脚本・監督:針生 悠伺 出演:春日潤也 / 時間:8分

【配信概要】
『毎週金曜は、ミラーライアーフィルムズ短編映画の日。』として、ドコモの映像配信サービスLemino 「ミラーライアーフィルムズ」チャンネルから、Season1〜Season4、Season5 以降の新作・オリジナル作品・関連作品などが順次配信される予定。


【「ミラーライアーフィルムズ」概要】
ミラーライアーフィルムズは、映画プロデューサーの伊藤主税、俳優の阿部進之介、山田孝之らがプロデュースする、クリエイターの発掘・育成を行う短編映画制作プロジェクト。2021〜22年公開のSeason1〜4では公募作品を含む、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなどが監督した36本の短編映画を発表した。短編映画だから、短編映画ならば挑戦してみたいと、映画未経験者や普段映画に関わらない異なるバックグラウンドのクリエイターが集まり、新しい視点やアイデアが生まれる場となっている。

Season1〜4 参加監督(五十音順)
Azumi Hasegawa/阿部進之介/安藤政信/井樫彩/池田エライザ/枝優花/GAZEBO/紀里谷和明/Ken Shinozaki/駒谷揚/齊藤工/志尊淳/柴咲コウ/柴田有麿/武正晴/西遼太郎/野﨑浩貴/花田陵/林隆行/針生悠伺/福永壮志/藤井道人/藤原知之/真壁勇樹/松居大悟/三島有紀子/水川あさみ/三吉彩花/村岡哲至/村上リ子/ムロツヨシ/山下敦弘/山田佳奈/山田孝之/李闘士男/渡辺大知

劇場公開中のSeason5には、竹中直人、大橋裕之、榊原有佑、ピウス・マチュルスキス、巖川虎太郎、十川雅司、Season6には小栗旬、浅野忠信、Season7には加藤浩次、加藤シゲアキの参加が決定した。

【『MIRRORLIAR FILMS Seaosn5』配信スケジュール】
7月5日(金) 『変哲の竜』
7月12日(金) 『たてこもり』
7月19日(金) 『NAIKU』
7月26日(金) 『さようなら、あおいの赤いメガネンティティ』
8月2日(金) 『駆け抜けたら、海。』
8月16日(金) 『MIMI』
8月9日(金) 『参画屋の仔羊たち』