テレビドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系/毎週火曜22時)の第2話が、4月27日(火)に放送された。本作は、インテリアメーカーで広報を担当し、インフルエンサーとしても活躍する真柴くるみ(川口春奈)が、価値観の違う人々とルームシェアをしながら、恋や友情を育む“うちキュン”ラブストーリー。第2話では、真柴と藤野駿(横浜流星)の“冷蔵庫キス”が描かれ、Twitterなどで話題になった。今回は評判の高かった本キスシーンの魅力を紐解く。 (文=阿部桜子) ※本記事はネタバレを含みます。ご注意ください

■『着飾る恋』第2話あらすじ

 多忙な生活ゆえ、マンションの契約更新を忘れており、ひょんなことから、個性の強いメンバーたちとルームシェアをすることになった真柴。これまで、勤務先の「el Arco Iris」の社長・葉山祥吾(向井理)に、7年間も憧れ続け、広報として会社に貢献すべく、1日3回のSNS更新を頑張ってきたのだが、葉山が突然社長を退任し、消息も絶ってしまったことで、真柴は意気消沈する。

 さらには、新社長就任により会社の方針が変更になる可能性があることから、真柴は、会社と個人のSNSの全面停止を命じられた。第2話では、5年間毎日コツコツと続けてきたことを、突然取り上げられた彼女が、自分にとってインフルエンサー活動は何なのかに向き合う姿が描かれる。

 今回は、第1話で人物紹介程度にしか登場しなかった寺井陽人(丸山隆平)と羽瀬彩夏(中村アン)のベールも徐々に剥がされていき、物語のエンジンがかかりはじめた回だったが、ラストでまさかの急展開を迎える。真柴と藤野駿(横浜流星)がキスをしたのだ。

■真柴と駿が“おうち花見”で急接近

 「めっちゃ良かった」「美しい」とTwitterなどでも評判だったラストのキスシーンは、間違いなく第2話最大のハイライトだった。キスにたどり着くまでの経緯はこうだ。公式発表を前に、葉山の社長退任がリークされ、真柴は、葉山のインタビューを実施していた出版社へ直接謝罪に向かわなければいけなくなる。

 その担当者が小田原にいるということで、わざわざ現地まで赴いた真柴は、この日予定されていた早乙女香子(夏川結衣)の送別会を兼ねた花見に行けなくなる。東京に到着したころには日は傾き始めており、公園に着いたのは、あたりがすっかり暗くなった時間だった。ため息をつく真柴。しかし「遅いよ!」と駿の声が響く。春といえど、まだ夜は寒い桜の季節の中で、鼻を赤くしながら、駿は真柴を待っていたのだ。

 駿は公園へ不法侵入し花見をやり直そうとするが、真柴の足が靴ずれで限界を迎えていることもあり、家に帰って、羽瀬の絵を眺めながらの“花見”をすることに。お酒の力もあることからか、駿はスペイン料理店を潰してしまった過去を自ら打ち明け、また真柴もSNS投稿は葉山のためではなく自分自身が好きだから行っていたのだと飾らずに話す。

 ONとOFFの境界線がぼやけながらも働き続ける真柴と、雨の日は休むなど自由気ままに働く駿。ゆったりと流れるおうち花見の時間は、正反対の二人が、その正反対さはそれぞれの人生や想いが詰まった結果で出来上がったものだと、気付く大切な瞬間であった。そんな二人は、美しい桜とお酒の力が働いたのか、ポテトサラダを探しに行った冷蔵庫の前で、優しく口づけをする。世の中にあふれるラブストーリーの中でのキスシーンは、もはや恒例行事で驚くようなことではない。しかし、今回のキスシーンがここまで特別に映ったのは、塚原あゆ子による“あざとくない演出”のおかげではないかと考える。

■リアルさと奇跡のちょうどいい塩梅

 塚原が演出を務めた第1話と第2話を見たところ、本作の魅力は、“うちキュン”ラブストーリーなだけあり、あくまでも日常を逸脱しない範囲で、胸キュンシーンが登場する点にあるように感じられる。もちろん表参道の一等地にイケメンたちと月5万円でルームシェアする点などドラマならではの非現実要素もある。しかし、基本的には、われわれ視聴者が抱える悩みや問題などを中心に描いていき、そこに少しの奇跡と刺激を加えることで、生活の延長線上にある物語を輝かせるというのが本作のようだ。

 今回のキスシーンも、ごく普通の生活の一部の中で唐突に描かれた。キスをゴールとして用意された絶景や、長年蓄積された想いなどはなく、冷蔵庫を漁るために立ち上がったその先で、ちょっとした勢いから、真柴と駿は唇を重ねることになる。現実世界におけるキスは、映画やドラマほど神聖なものではないのは事実だ。飲みすぎたから、寂しかったから、顔がそこにあったから…特別でないキスの言い訳なんて残念ながらいくらでも思いついてしまう。

 大人になれば一度や二度は経験する“やってしまった”瞬間が、生々しいほどのリアリティを含みながら描かれていたのが、本シーンが新鮮なドキドキを生む理由だったろう。唇を重ねた部分をカットしてしまえば、まるで何事もなかったかのように見えるほど、キスの前後で二人が持つタッパーの位置が変わらなかったのも、“やってしまった感”を増幅させていた。視聴者に身構える隙さえ与えぬ間の取り方の上手さと、キスの後の戸惑いの演技の絶妙さは、演出と俳優が一丸となってこのシーンに挑んだことを感じずにはいられない。

 第96回ザテレビジョンドラマアカデミー賞のインタビューで塚原は、国内外のドラマを見ることができる現代の視聴者の目は肥えてきており、「その中で視聴者の皆さんの『こんな設定ありえない』という気持ちが『しらける』に直結するんだなと感じていました」と語っていたことがある。その反面ライブドアニュースのインタビューでは「日本のエンタメの場合、『そんなの嘘くさい』と思われてしまうことに対して、怖がりすぎているところがある」ともコメントしていた。視聴者の心が離れない程度のリアリティと、日常を忘れられる甘い刺激と奇跡。この塩梅が、われわれの心をときめかせる演出の鍵なのかもしれない。

■キスに重なる「不思議」にも注目

 さて、もう1つ忘れてはならないのが、本シーンを彩った星野源による主題歌「不思議」だ。第2話放送日の0時に配信リリースされ、同時に歌詞も公開された本楽曲。第1話放送直後のラジオ番組『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)では、「不思議」にまつわる歌詞は、先週の段階でドラマ内に登場しなかったことが星野の口から明言されていた。

 そして今回のキスシーンで流れたのが、<幼い頃の記憶/今夜食べたいもの/何もかもが違う/なのになぜ側に居たいの/他人だけにあるもの>という「不思議」にまつわる歌詞の部分であった。第2話放送直後の同ラジオ番組では、この部分は、真柴と駿の正反対の関係性を基にしていることを星野が明かしている。

 「主題歌が良いところでかかるなあ」「今週も主題歌のタイミングが天才でした」と第2話でもTwitterで主題歌とのシンクロ度をかみしめるツイートが散見されたが、それはあらかじめ第1話と第2話で主題歌が流れるタイミングを、なんとなくではあるが聞いた上で作られたというのもあるようだ。主題歌発表の際に「キスにも、涙にも似合う曲が作れたらと思っています」と星野はコメントしていたが、まさにその通りの仕上がりになっていることが今回で証明された。

 ちなみに、星野自身、楽曲制作にあたり、台本は数話しか読んでいないため、今後の展開が歌詞の中に隠されているという演出はないとのこと。とはいえ、たとえどんな展開が待ち受けようとも、きっとこの曲が物語と調和していくのは、容易に想像できるだろう。1日が終わりを迎えるタイミングでも日常にすっと溶け込む優しさを持ちながら、ラブソングに似つかわしくない“地獄”や“檻”のようなワードが入った歌詞。その心地いい正反対さも真柴と駿につながっているように見えてしまう。