#300 Pebble Beach
ぺブルビーチ(カリフォルニア、米国)


17マイル・ドライブ沿いには7つのチャンピオンシップゴルフコースと9ホールのピーターヘイGCがあります。その半数が海に面した絶景コース。

 カリフォルニアのモントレー半島に位置するペブルビーチ。

「ザ・ロッジ・アット・ペブルビーチ(通称ロッジ)」のテラスからは、ペブルビーチ・ゴルフリンクスの最終18番ホールの芝生の向こうに、紺碧の太平洋と入り組んだ海岸線が望めます。1本の太い杉の近くで、海風に揺れるピンフラッグが、ホールの場所を示しています。


太平洋に面して佇む、白亜のザ・ロッジ。車通しにはポルシェなどの高級車がバレットパーキングの順番待ちをしていました。

ザ・ロッジのテラスから望む、ペブルビーチ・ゴルフリンクスの18番ホール。

 ここは世界中のゴルファーにとって羨望の地であり、一生に一度は行ってみたいと願う、ゴルフコースの最高峰。


ペブルビーチ・ゴルフリンクを利用するにはザ・ロッジに2泊が必要。半年前から予約は激戦。

 PGAツアーのAT&Tペブルビーチ・プロアマ、そして(1972年から)およそ10年に一度全米オープンが開催されており、その回数は6回にも上るという名門中の名門です。

 ゴルフ専門誌によるゴルフコースのランキングでは常に上位に位置。ゴルフ界の帝王ジャック・ニクラウスも「生涯であと1ラウンドしかプレイできないとしたら、私はペブルビーチを選ぶでしょう。はじめてこのコースを見た時から、大好きでした。おそらく世界最高でしょう」との言葉を残しています。

 そのペブルビーチ・ゴルフリンクスの18番ホールをロッジのテラスから見渡すことは、ゴルファーにとって最も誇らしい通過儀礼だそうです。


ザ・ロッジのパラソルが並ぶテラス席。

グリーンの向こうに太平洋が。

 ゴルフをやらない私がこのテラスに立つことは、まさに“猫に小判”な体験。そんな私でもロッジの格調高い空気に触れると、ゴルファーにとってここが特別な場所であることがわかります(ここの空気には、何か特別な成分が含まれているのでしょうか!?)。

花崗岩の岩場、神秘的な朝もや…美しい野生を感じるドライブへ


ザ・ロッジ周辺にはショッピングアーケードやこのエリアのゴルフの歴史を展示するインフォメーションセンターも。

 ペブルビーチは、モントレー半島一帯のリゾートエリアかつ、地元コミュニティ。半島の海岸線に沿って、「17マイル・ドライブ」という幹線道路が走り、南北の入り口では通行料(12ドル)が徴収されます(ペブルビーチのレストラン利用者や宿泊者には払い戻しアリ)。

 17マイル・ドライブは、その名の通り全長17マイル(約27キロ)。杉が縁取る、くねくねした道を車で走ると、木漏れ日の中、コーナーを曲がるたびに太平洋が見えたり、隠れたりします。強風によって押し曲げられた木立や、規則的なヒビが走る花崗岩の岩場、深い青をたたえた太平洋、朝もやが立ち込める日も珍しくなく、荒々しくも神秘的な野生を感じる風景です。


ゼニガタアザラシが出産に訪れるファンシェルビーチ。

 この道は自動車が登場する前、馬車の時代から風光明媚な景色が人々を惹きつけてきました。『宝島』の作者スティーヴンソンもこの界隈を歩きまわり、作品の構想を練ったとされます。


カモメやウミウ、ペリカンものんびりとした様子。

 そしてペブルビーチを開発したサミュエル・モースもまた、この自然を愛し、開発においては環境保護を最優先事項にしたそうです。

 中でもモースにとって特別な存在だったのが、「ローン・サイプレス」と名付けられた1本のモントレー・イトスギ。自生しているのはココとカーメル湾を挟んで対岸のポイント・ロボスの、世界でも2カ所だけだそうで、樹齢は少なくとも250年! 太平洋に突き出した岬にたくましく生えている孤高の木です。


左手の岬の先端に立つ、カクカクとした幹の一本がローン・サイプレス。根元が崩れないよう、補強してあります。

 モースは「このプロジェクトの基本は陸・緑・海。ローン・サイプレスはまさに完璧なシンボルだ」と、この杉をペブルビーチのロゴに採用。やがて全米で一番写真が撮られる木になったそうです。


ローン・サイプレスがロゴに。

岩肌にびっしり!? 野生のアザラシやアシカと出合える

 17マイル・ドライブ沿いのモントレー湾国立海洋保護区には180種以上の海鳥が生息。この界隈で最も多い草食動物はオグロジカで、ゴルファーがチップショットに集中している脇でのんびり草を食んでいたりします。


オグロジカの親子がコース内に出没。早朝や夕暮れ時に見かけることが多いとか。

 そして17マイル・ドライブのハイライトといえば、バード・ロック。海岸線から少し沖に浮かぶ小島に、ゼニガタアザラシやカリフォルニアアシカたちが岩肌を覆う勢いでびっしりと並んで昼寝をしています。小島の前の海ではくるりとジャンプして、水とたわむれる子アザラシの姿も。


こちらがバード・ロック。遠くからではわかりづらいけれど……。

 かつて、この小島は海鳥のフンが堆積して真っ白だったとか。それが肥料になるとわかると、人々はこぞって採取。今ではアザラシたちのたまり場になっています。


岩肌にびっしりアザラシやアシカ! 波間をジャンプする子アザラシも。

 17マイル・ドライブ沿いのファンシェルビーチは、ゼニガタアザラシの出産シーズンの4月1日〜6月1日はクローズされます。また、カリフォルニアラッコは1938年には50頭しか生息していなかったのが、保護の甲斐あってか、現在では3,000頭近くまで回復したそう。

 頭上を見上げれば、ウミウやペリカン。季節によっては、沖にコククジラやザトウクジラ。そして振り返れば、優雅に点在するビリオネアの別荘群。


海に面して連なるビリオネアの別荘。億万長者の皆さんは大きな窓からこの海を眺めているのでしょうか?

 ここではゴルファーにも、野生動物にも、億万長者にも、観光客にも、誰にとっても楽園ビーチなのですね。

ぺブルビーチ

●アクセス サンノゼ国際空港、サンフランシスコ国際空港、オークランド国際空港から2時間圏内
●おすすめステイ先 ザ・ロッジ・アット・ペブルビーチ
https://www.pebblebeach.com/accommodations/the-lodge-at-pebble-beach/

取材協力
カリフォルニア観光局 https://www.visitcalifornia.com/jp/


古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

文・撮影=古関千恵子