Q.今、流行りのシェアキッチン。利用の注意点はありますか?

最近、何人かの料理人から、キッチンをシェアする「シェアキッチン」について話を聞きました。シェアオフィスのように、初期費用を抑え、実験的に店を出すことができたり、友人の料理人同士のイベントやケータリングなどを企画する際にも使えそうな気がしていて、料理人の働き方を変える可能性を感じています。しかし、実際のところ、どんなものなのか、よく分かっていません。また、できたばかりのシステムのようなので、問題がないのかということも心配です。シェアキッチンを利用する際の注意点などあれば教えてください。
(20代、フランス料理店勤務)

A.家主仲介業者、共同運営者など複数が絡む場ですのでさまざまな注意が必要です

確かに最近「シェアキッチン」という言葉を聞くようになりました。しかし、「シェアオフィス」も、単に会社の登記だけ置いておくバーチャルオフィスや、机やプリンター、会議室などの施設を共有して使うコワーキングスペース、区切られた占有スペースがあるレンタルオフィスなど、色々な形態があります「。シェアキッチン」にも、色々なパターンあります。

継続的な利用なら詳細確認を

まずは、言葉通り、一番シンプルな、「キッチンをレンタルする」ケースから解説していきます。

キッチン付きの講義室をイメージしてもらえるといいと思います。これも広い意味でのシェアキッチンといえるでしょう。この場合は、貸し出す方との一対一の契約になりますから、利用時間や料金など、基本的な条件をチェックしておけば問題ありません。ただし、その場で食べ物を作って売ったりする場合は、製造や販売の許可が必要です。事前に保健所の許可を得ている許認可付きのスペースもありますから、貸し出す側に確認してみるとよいと思います。

次に、「日にちや時間を変えて、複数人で同じスペースを利用する」場合。これは、たとえば、昼はカレー店、夕方は喫茶店、夜はバーといった形や、平日は居酒屋、土日はダイニングといった形で、ひとつのキッチン、店舗を、複数のオーナーが様々な業態で回していくスタイルです。この場合、まずは、家主との間で、複数人での営業が問題ないかの確認が必要です。通常は、何人かで家主から直接借りるのではなく、シェアキッチン業者や、もともと借りていたお店のオーナーから転貸を受けることが多いと思いますので、確認するのはその方になります。また、複数名ですと、光熱費の負担や、共通の備品の取り扱い、ひとりが退去することになった場合の対応(原状回復費用含め)、業態の違いによる適法な営業許可の取得など、オーナー同士でしっかりと取り決めをしておかなければなりません。

複数オーナーがいる「横丁」形式

最後に、最近増えているのは「横丁」形式です。ひとつの店舗を、いくつかの区画に分けて、それぞれのオーナーがそれぞれのお店を経営するというものです。気を付けるべき点は上記と同じですが、横丁の場合、通常は、家主と個々のオーナーの間に、横丁全体を運営する事業者が入ります。したがって、そことの取り決めを、確認しておきましょう。内装工事や原状回復など、他の店舗がすぐ隣で営業している関係で、時間的な制限を受けることもあります。

また、横丁全体のブランド維持のために、イベントへの参加や割引、広告費の負担などが義務になっていることも多いと思います。横丁のブランドや、初期費用が安いという一方で、やはり、自分ひとりのお店ではありませんから、どうしても色々な制限がかかることは理解した方がよいでしょう。

そうじて「シェアキッチン」は多くの事業者が関係する複雑な形態になりがちですので、不安であれば一度専門家に相談することをお勧めします。

飲食店専門弁護士 石﨑冬貴
1984年、東京都生まれ。神奈川県弁護士会会員。横浜パートナー法律事務所所属。飲食店法務を専門的に取り扱うほぼ唯一の弁護士。著書に『なぜ、飲食店は一年でつぶれるのか?』(旭屋出版、2018年)がある。

本記事は雑誌料理王国2019年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2019年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。