築80年の町家を改装したプチメゾン。
大原野菜や天然の魚介をお値打ち料金で

グランメゾンで料理長を務めた森永正宏さんが、独立に際して選んだスタイルは、元自宅を改装した小さなレストランだった。メニューは1コースのみで、予約制。昼夜それぞれ12人限定で、味付けや火入れは森永さんがひとりで行う。

店名の「ファミーユ」(仏語で「家族」の意)が表すように、テーマは「シェフと食べ手の距離が近い店」。まるで森永家に招かれたような、アットホームな店だ。

森永さんの料理は、丁寧な素材選びから始まる。毎日市場に行って天然の魚介類を仕入れ、日曜には大原の朝市で無農薬野菜を仕入れる。月に2〜4回、北海道から「おまかせで一箱」届く野菜は、箱を開けるまで何が入っているかわからない。紫のジャガイモなど、それまで見たことのない野菜もあり、そこからどんな料理を作るか考えてゆく。あくまでも素材ありきの料理なので、グランドメニューも季節の定番もない。

たとえば今回飾りに使った白い花は、育ちきってしまったルッコラ「これ、お店の人がくれたんです。ひねて﹃もう食べられへんからよかったら持ってって﹄って。だから二度と同じ料理は作れません(笑)」

ほかにも茶の新芽、ネギボウズ、柿の葉の新芽など、その時期にしかない野の草木を効果的に使い、美しく端正な皿に仕立ててゆく。卓越したセンスと技術があればこそ可能な、まさに自然との共演なのだ。

コース価格は「堅苦しく感じず、気軽に来られるように」と設定したが、料理内容に凝るうちに皿数が増え、素材の質も上がっていった。
「お客さんにとっては、かなりコストパフォーマンスがよくなっちゃいました」と森永さんは笑う。

その時期にしかない素材を極上のひと皿にまとめ上げる

大原の野菜と鮎のコンフィガスパチョ仕立てジャガイモのチュイル
アユには黒オリーブのペーストとバジルをサンドしてあり、ソース代わりのガスパチョがさわやかさをプラス。格子状のチュイルには、生け花のように大原野菜を活け込んだ。ルッコラの花、ユキノシタ、茶の新芽など今の時期しかお目にかかれない野草をひとつずつ楽しみたい。

ナチュラルに、シンプルに、「生きるがまま」を表現

昔から自然食品に関心が強かった森永さんは、生産者を守るためにも無農薬野菜や自然食品を買ってきた。
「食材はまず安全であるべき。そうすれば自ずとおいしいものに行き当たるし、その逆もあります。おいしいな、と思ったら無農薬だったりね」
そんな森永さんが考えるBioは「生きるがままに」だという。

森永さんの1週間のサイクルは、まさに自然体だ。まず月曜にその週に使うフォンや生地類などのベースを仕込む。火曜から土曜までは、その日の魚介類や野菜を組み合わせて、その日だけの料理を作る。日曜は定休日で、大原の朝市で野菜を買い付けた後、終日家族と過ごす。もちろん、日曜も営業して欲しいという声は多い。しかし「子どもの休みと合わなくなるから」と、森永さんは言う。「家族あっての仕事ですから、そこは大事にしたい」。

ふれあい朝市
京都市左京区大原野村町342
☎075-744-4321(里の駅大原)
毎週日曜6:00〜9:00
www.satonoeki-ohara.com
金印 株式会社 0120-39-1234
http://shop.kinjirushi.co.jp/

朝市で仕入れる大原産と
北海道直送の野菜たち

京都の大原野菜(奥)は、気候や水
の関係で味がいいと評判だ。意識の
高い生産者も多いため、安全で上質
な野菜を求めて、京都中の名だたる
シェフが毎週「ふれあい朝市」に足
を運ぶ。またワサビ専門店「金印」
のこだわり野菜セット(手前)は一
箱単位で購入できる。時期・数量限
定のため注意したい。

古い町家をシンプルに改装した店内には、マダムが選んだアンティークの家具や、自家菜園の植木鉢がインテリアのようにさりげなく並び、温かい風情がそこここに漂う。なるほど、ナチュラルな生き方がそのまま表れたレストランだからこそ、シェフもお客も心からリラックスできる空間になるのだろう。

Masahiro Morinaga

1967年京都市生まれ。東京の「シェ・イノ」で6年間修業し、93年に渡仏。「ギー・サヴォワ」「トロワグロ」などで4年間経験を積む。 03年より名古屋の「ミクニナゴヤ」総料理長を務め、07年神戸の「グランメゾン グラシアニ」料理長に就任。13年に自店をオープン。

ラ・ファミーユ・モリナガ
La famille Morinaga
京都市中京区蛸薬師通新町西入ル
不動町175-5
☎075-223-3120
●11:30〜13:30LO、18:00〜20:00LO
●日・月休
●コース 昼4500円、夜8500円
●最大18席(昼夜各12名まで、予約制)
http://famille-morinaga.jp/jpn/

藤田アキ=取材、文 中西一朗=撮影

本記事は雑誌料理王国287号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は287号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。