2つの成分の科学変化を理解する

アルギン酸ナトリウムを含む液状物を塩化カルシウム溶液に浸し、皮膜形成して球状にする方法と、カルシウムを含んだ液状物をアルギン酸ナトリウム溶液に浸し、皮膜形成して球状にする方法の2通りがある。

この技法によって、キャビアやイクラのような擬似魚卵を作ったり、ソースやスープを球状にすることが可能になった。温めても溶け出すことがないので、温かいソースを球状にして提供することもできる。

理論をまず覚えましょう

グルコ GLUCO

グルコン酸カルシウムと乳酸カルシウムの混合物

化学式……(CH3CHOHCOO)2Ca と(CH2OH(CHOH)4COO)2Ca.H2O

乳酸カルシウム。アルギン酸ナトリウム溶液に食材を浸して球状形成する場合、食材にはカルシウム分が必要になるため、カルシウム成分として使われる。

カルシック CALCIC

豆腐の凝固剤としても使われている

化学式……CaCl2

カルシウム塩。塩化カルシウム溶液に食材を浸して球状形成をするときの溶液として使用される。にがりのように、豆腐の凝固にも使われている。

アルギン ALGIN

コンブのネバネバの正体がこれ!

化学式…… (NaC6H7O6)n

昆布やワカメなどの褐藻類に含まれる成分を粉末化したもの。アルギン酸ナトリウムとして、球状形成には欠かせない成分。食物繊維が豊富で、ダイエット食品にも使われる。

【基本編】重ならないように溶液の中に落としていく

アルギン酸ナトリウムを加えたら、よく攪拌してしっかり空気を抜くことが大切。注射器よりもディスペンサーのほうが手の感覚が伝わりやすいので使いやすい。溶液の中で重ならないように落としていくことがポイントだ。

【応用編】リンゴジュースがイクラのように

クチナシ水を少し入れたリンゴジュースにアルギン酸ナトリウムを加えた液体を、塩化カルシウム入りの水の中に落としていく。写真はスペイン製の「キャビアボックス」と呼ばれる球状形成器で、一度に何十個もの球形が空気の力で落ちる。

黒蜜キャビア

見た目はまるでキャビアだが、食べてみれば黒蜜。そんな遊び心満載のひと皿を可能にするのが、この球状形成のテクニックだ。黒蜜にはカルシウム分がないのでグルコを加え、さらに増粘剤のシャンタナを足して、"黒蜜液"を作る。それをアルギン酸ナトリウム溶液に落としていけば、黒蜜キャビアの完成だ。

アルギン酸ナトリウムの溶液に素材を落とす

もともとの素材にカルシウム分があれば、何も足さずにそのままアルギン酸ナトリウム溶液の中に落とす。素材にカルシウム分がなければ、あらかじめ素材にグルコを加えればOKだ。

ヨーグルトボンボン・チーズの温かいボンボン

球状形成のよいところは、70〜80℃の湯でも大丈夫な点。チーズの温かいボンボンには、クリームチーズとサルサソースに少量のグルコを混ぜて、カルシウム分を足すのがポイント。ヨーグルトボンボンには、牛乳を加えてカルシウム分を補充している。

本当はどうなの?球状形成の使い方

中村 哲 教授

Q.身体への影響はないのでしょうか?

アルギン酸ナトリウムをはじめとしたテクスチャーは、すべて植物や海藻から取れるものなので、安全性も基本的に心配はありません。

Q.味の変化はありませんか?

球状形成に使用するテクスチャーは、ほとんど無味無臭。料理の風味に影響を及ぼすことは、まずありません。ただ、グルコは多く使うと苦味がでます。

Q.膜の厚さを調節することはできますか?

アルギン酸ナトリウム溶液や塩化ナトリウム溶液に漬ける時間を変えれば、ある程度、膜の厚さを調節することはできます。

本記事は雑誌料理王国243号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は243号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。