強い色調と個性的な味わい クラシカルにもモダンにも演出できる

「仕込んでおかないと味が出切らないものもあります」と、本多哲也シェフが紹介してくれたのはイカスミのソースだ。近年のイタリア料理は「フレッシュ感を重視」する傾向が強い。そのため、オーダー後に作られるソースも少なくない。しかし、このベネト州発祥のソースはあらかじめ用意しておき、前菜、パスタ、メインと幅広く活用できる。日本でも定番となった。10年ほど前、本多シェフは独立した際、このソースに独自のアレンジを加えた。以来、このイカスミのソースは、シェフにとって思い入れの強いソースになった。

イカスミのソースを作る時に用いた貝のだし汁は、イカスミのパスタを作る時にもう一度加える。コクとうま味の凝縮した、ミシュラン一ツ星をキープする「リストランテ ホンダ」の人気メニューのひとつだ。

味に深みと安定感を出す自家製トマトソースの効用

「イカをスミで煮込む前に、トマトとニンニク、赤トウガラシ等で作ったマリナーラソースを入れるのが一般的ですが、僕はトマトとタマネギで作った自家製のトマトソースを使います」。これがシェフならではのアレンジ。ソースの仕上がりに安定感が出る。もちろん他にも、アサリやハマグリのだし汁を入れて煮込むといった工夫もしているが、しかし、「それは、他にも試みているシェフがいるはず」と本多さん。

使うイカは、季節によって、ヤリイカ、スミイカ、シロイカ、アオリイカと変化する。「ソースの決め手はテクニックだから、イカに対してはそれほど厳密ではない」としながらも、「できれば相模湾産で大きすぎないものを」等のこだわりはある。

またイカスミについては、生イカからとったスミに冷凍ものを足しているが、輸入品は臭いがきつすぎるので、国産に限る。「味のよさだけでなく、盛り付けの面でも"黒"の個性を活かして美しく」を心がける本多シェフ。2時間かけて仕上げたつややかな黒いソースは、シェフの美意識をも刺激する。

【レシピ】本多さん流「イカスミのソース」

イカがやわらかくなるまで煮ますが、指定の時間を過ぎても味が出ない場合は、水を足し、さらに煮てください。完成したソースを使って、今回はパスタと前菜を作りましたが、メインディッシュだったら、ポワレした魚と組み合わせてもいいですね。ソースの上に新ジャガイモをあしらい、その上に魚をのせる。仕上げに貝類のだし汁を注いで、スープ仕立てにするのもおすすめです。

イカスミのソースに使う材料。下処理をしたイカやだし汁や調味料など、すべて用意してから調理開始。

1.ヤリイカとスミイカは、身、ゲソ、内臓、スミなどに分け、身とゲソは皮をむいておく。身は2cm幅くらいの輪切り、ゲソは内臓と合わせ、たたいてミンチ状にする。

2.生イカからとったイカスミと内臓をすり鉢に入れてする。途中、冷凍のイカスミを混ぜ、なめらかになるまでさらにする。ツブが残っていると仕上がりの舌触りが悪くなるので注意。

3.鍋にオリーブオイル、ニンニク、赤トウガラシを入れ、ニンニクがきつね色になるまで加熱。

4.ミンチ状にしたゲソにオリーブオイルを馴染ませておく。こうすると鍋に入れた時に団子状にならない。鍋にイカを入れたら、ある程度火を強めて、イカから水分が出ないようにする。

5.イカの身もあらかじめオリーブオイルをふってから鍋へ。表面が白くなったら、辛口の白ワインを入れ、アルコールを飛ばしたら、自家製トマトソース(右はシェフがトマトソースを作る時に愛用しているホールトマトの缶詰)を入れる。

6. 自家製トマトソースはマリナーラソースよりも味が濃い目なので、やや少なめに入れる。

7.イカスミをアサリのだし汁で溶き、それをこしながら鍋の中に入れ、90〜120分煮込む。

ソースの材料

ヤリイカ…1kg/スミイカ…1杯/アサリのだし汁…400cc/トマトソース…250g/白ワイン…100cc/冷凍のイカスミ…90g/ニンニクのみじん切り…大さじ1/2/赤トウガラシ…1本/オリーブオイル…100cc(ソース用・イカにからめるオイル…適量)/塩…適量

イカスミのソースをパスタ料理で使う

イカスミのスパゲティ 北海道産の生ウニ添え

作りおきの必要な定番ソースだからこそひと工夫、ひと手間かける。オリジナリティを出す価値がある。

材料
スパゲティ、イカスミのソース…100g/北海道産の生ウニ…適量/イタリアンパセリ…少々/ドライトマト、塩…適量

作り方
1.たっぷりの湯に塩を入れ、スパゲティをゆでる。
2.ゆであがったらイカスミのソースで和えて皿に盛る。
3.北海道産の生ウニ、ドライトマト、イタリアンパセリなどを彩りよく盛り付ける。

イカスミのソースを前菜で使う

ホワイトアスパラと魚介類のサラダ仕立てイカスミのソース

材料
ホワイトアスパラ…2本/ミル貝、赤貝、トリ貝、ヤリイカ(3㎝幅)、車海老…各1切れ/ゆでたソラ豆…3個/ミョウガ(ピクルスでマリネしたもの)、カラスミ、サラダ用の葉野菜、自家製フレンチドレッシング、バルサミコ、レモン汁、自家製ミョウガとトマトのドレッシング、塩、コショウ…各適量

作り方
1.イカスミのソースをシノワでパッセし、エクストラバージンオリーブオイルと塩で味をととのえたら、皿に刷毛でソースを敷く。
2.貝類、エビやイカを自家製のフレンチドレッシング、バルサミコ、レモン汁、塩、コショウ、エクストラバージンオリーブオイル等で和えて、1の皿に盛る。
3.その上をカラスミ、ミョウガ、ソラ豆や葉野菜などで飾って盛り付け、自家製ミョウガとトマトのドレッシングや塩で味をととのえる。

Tetsuya Honda

1968年、神奈川県生まれ。都内のリストランテで修業後、97年に渡伊・渡仏し、ミラノを中心として名店でキャリアを積む。99年に帰国し、「リストランテ・アルポルト」の副料理長を経て、2004年に現在の店をオープン。11年には、「ブーランジェリーパティスリー ラルカンシェル」を開いた。

リストランテ ホンダ
RISTORANTE HONDA

東京都港区北青山2-12-35 1F
☎03-5414-3723
● 12:00〜14:00LO
18:00〜22:00LO
●月休(祝日の場合は翌火休)
●コース 昼2800円〜 夜8000円〜
(税・サービス料10%別途)
●25席
http://ristorantehonda.jp/

上村久留美=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国237号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は237号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。