六本木の「虎峰」は、おまかせコース1種類のみを提供する中華料理店。開業当初、コースは20皿ほどで構成され、その時点で「少量多皿」というコンセプトがメディアで紹介されていた。オープンから10カ月ほどたった今、皿数はさらにじわじわと増えている。「今は30皿を越えることもあります。やりたいことが多くて」と、料理長の山本雅さん。カウンターで少量多皿のコースを提供するこのスタイルは、山本さんが鮨屋から着想を得たものだという。

もちろん、山本さんが供するコースの真髄は、皿数の多さだけにあるわけではない。ひと皿ひと皿の工夫、しっかりとした構成と、山本さんならではの発想がゲストの支持を得ているのだ。アンケート投票者からは、「少量多品種の料理をハイクオリティーに表現している」とのコメントが寄せられている。

少量多皿のコース展開を支える器。シェフが自ら石川県や京都府、滋賀県まで器を選びに行く。江戸時代のものなど、ヴィンテージの皿が多い。

お客さまを楽しませたい やりたいのはあくまでも中華料理

「僕は本を読んで学ぶことよりも、ひらめきを重視しています」と山本さん。素材の組み合わせや調理法も、思いついたらとにかく試す。「10回やって1回上手くいったらいいほうです」。今回は、金目鯛と、カブとカリフラワーをソースにしたひと皿を供してくれた。シェフならではの素材選び。〝カブのアイスクリーム〞はテクスチャーの変化も楽しい。

コースの構成にもこだわりがある。「最初は、味付けが控えめで、食材の旨味を舌で探してもらえる料理を出します。コースが進むにつれて、味わいも濃くし、徐々に中華の要素を強くしていきます」。素材は、海鮮が多い。今回の金目鯛のひと皿はコースの中盤に提供され、その前後には、13種類のスパイスで下味をつけた四川風のイワシのオイル漬け、上湯とフランス産のキノコのソースを添えた平目などが供される。かたや、棒棒鶏、餃子、叉焼、酢豚など、日本の中華料理店の定番メニューも外さない。

山本さんはフランス料理店での修業経験もあるが、それは、あくまで自分の中華料理に活かしたいと考えての選択だった。今もインスピレーションを得るために通うのはフランス料理店や日本料理店。中国にも行ったが、本場の味を追い求めたいとは思わなかったという。山本さんは、日本の中華料理をベースに、自分のひと皿を追求している。

金目鯛 カリフラワー カブ

味は淡泊だが、脂の旨味がある金目鯛と、なめらかなカリフラワーのピューレ、パコジェットでふわふわのパウダー状に凍らせた〝カブのアイスクリーム"。異なる3つの要素が、素材の相性や香りの共通項でつながっている。

素材の味わいや香りの相性を見い出す
「カリフラワーとカブは、口に入れた後の香りの抜け方に共通点があると思いました」と山本さん。食材の相性を見い出して組み合わせを試す。

テクスチャーの変化を楽しんでもらう
〝カブのアイスクリーム"は、凍った状態と溶けた後の変化を味わえる。ポーションは小さいながら、2度おいしい、2度面白い仕掛けを工夫している。

金目鯛は弱火で火入れ

ピューレはカリフラワーとタマネギを炒めて上湯で伸ばし、ミキサーにかけた。〝カブのアイスクリーム〞は、塩と砂糖でカブをマリネして水分をとり、真空をかけた後に蒸してミキサーで回し、パコジェットで冷凍のパウダー状に

「虎峰」の客席はカウンターのみ。〝カブのアイスクリーム〞はゲストの目の前で盛り付けて、すぐに提供する。

Masashi Yamamoto

1985年和歌山県生まれ。大阪で四川料理や広東料理の修業を積んだ後、東京・恵比寿の「マサズ キッチン」で活躍。フランス料理店での経験を経て、2016年4月「虎峰」開業時より料理長を務める。

虎峰
koho

東京都港区六本木3-8-7
PALビル1F
03-3478-7441(完全予約制)
●17:00〜22:00(最終入店)
●日休
●コース 13000円
(ウォーターペアリング含)
アルコールペアリング
8000円〜
●15席
※サービス料10%

料理王国=取材、文 富貴塚悠太=撮影

本記事は雑誌料理王国271号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は271号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。