「知将・上田利治30」76年日本シリーズ(3)(前編)

「知将・上田利治30」76年日本シリーズ(3)(前編)

 【気骨で生きる〜知将・上田利治30】(前編)

 八回、山田久志が同点にされる前のピンチで「足立の投入があったろうに」という声が聞こえたが、その時の足立の模様を記者席の記者も評論家も知らない。

 俺?あの時?

 足立が言う。

 「7点差やろ。ひっくり返されると思う?思わんよね。俺は思わんかったから、スパイクをアップシューズに履き替え、グラブは鞄にしまい込んでいたわ」。臨戦態勢は解いていたのである。

 ともあれ、3連勝3連敗である。

 阪急の宿舎は水道橋のホテル。傷心のバスの中で上田利治はマイクを取った。

 「明日の新聞や今晩のテレビは見るな。読まんでいい。見んでいい。外出は自由。酒も飲めばええ。麻雀も構わん。その代わり、全員、朝の9時15分にユニホームを着て、ミーティングルームに集合してくれ」

 7点差を壊した山口高志は、その夜、失踪した。「失踪」は半分おおげさ。半分、本心である。

 そらそうである。あれで平然と選手食堂で食事を取っていたら、余程の無神経。だれもが白けたろう。山口にその無神経さはない。

 部屋のベッドで天井を空虚に眺めていたら、1年先輩の投手が「付き合え」と誘った。大洋から移籍してきた竹村一義である。新橋のステーキハウス。霜降りはうまかったが、いつもと比べ食は進まない。心の傷は深い。酒量は増えた。


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