家畜の感染症だが、人間にも感染する人獣共通感染症のブルセラ症が北朝鮮で猛威を振るっている。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、道の防疫機関の資料として、6月までの今年上半期に道内の国営小牧場、協同農場138ヶ所でブルセラ症が発生、約600頭が感染し、昨年の63ヶ所、300頭より倍増していると伝えた。

ブルセラ症は2017年に平安南道(ピョンアンナムド)で小規模ながら発生、翌2018年には黄海南道(ファンヘナムド)の協同農場23ヶ所で発生し、北部の慈江道(チャガンド)や平安北道(ピョンアンブクト)にも広がった。咸鏡南道で発生したのは2019年からで、19ヶ所だった。

防疫機関は、この勢いで感染拡大が続けば、今年の発生規模がさらに大きくなると見ているとのことだ。

ブルセラ症は牛、豚、ヤギの間で感染する細菌性感染症だが、北朝鮮では牛のブルセラ症がほとんどを占める。感染するとメスは不妊、早産、流産、オスは睾丸炎などの症状が現れ死亡することもあり、畜産業に大きな悪影響を及ぼす。人間が感染すると、高熱、倦怠感などが現れ、未治療時には死亡することもある。

感染対策としては殺処分と消毒が行われるが、北朝鮮では消毒用アルコールが不足していることもあり、効果的な対策は取られていない。

「牧舎周辺の消毒はまともに行われておらず、病気の拡散を煽っている。(防疫)専門家たちは、こんなやり方ではブルセラ症が根絶できないとため息を付いている」(情報筋)

それどころか、病死牛肉の食用すら行われているというのだ。

「ブルセラ症が発生し、乳牛や農耕用の牛が死につつあるが、殺処分で死んだわけではない。(病気で)死んだ牛は、食用として使われている」(情報筋)

国立感染症研究所の説明によれば、感染動物の加熱殺菌が不十分な乳・乳製品や肉の喫食による経口感染が最も一般的、とある。つまり、ブルセラ症で病死した牛肉は流通させてはいけないのだが、アフリカ豚熱(旧称アフリカ豚コレラ)で死んだ豚も食用として流通されたように、食糧難の北朝鮮で、食べられる肉を捨てるという選択は非常に難しいだろう。

ちなみに、平安南道のデイリーNK内部情報筋は今年3月、道内の協同農場で飼育されている農耕用の牛が120頭も死んだと伝えたが、ブルセラ症流行との関連は不明だ。

一方、北朝鮮政府は公式に認めていないものの、新型コロナウイルスに感染した疑いのある人々が次から次へと隔離されている。また、コロナ以外の感染症も広がりを見せているが、効果的な対策が取られていない。