北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会(中央党)と、全国13の道、特別市、直轄市の党委員会(道党、市党)の組織指導部には「6課」と呼ばれる部署がある。かつては「5課」と呼ばれ、いわゆる「喜び組」など金正恩総書記の身辺の世話をする要員の選抜・管理を行ってきたが、任務はそれだけではない。

成分(身分)や思想が良好とされる特権階層に、結婚相手を紹介する役割も担っているのだ。

その対象となるのは、新旧の最高幹部や、かつて金日成主席と共に抗日パルチザン活動を行ったとされる「赤い貴族」の子息、朝鮮戦争に参戦して韓国軍の捕虜になったものの、最後まで転向せず北朝鮮に戻ってきた「非転向長期囚」やその子息などだ。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、金正恩氏は最近、「自分が仲人になって、全国の土台(身分)と品性の良い未婚女性と、中央党の子息や闘士(パルチザン)の家の子息を結びつける」と述べ、中央党6課に対して、条件に合った女性を選抜するように指示を下した。

これを受けて中央党6課は、全国の道党、市党の6課に対して、女性の選抜作業を進めるように指示した。各地域に割り当てられたのは20人。うち16人は土台の良い家の出で、美人の未婚女性であることが条件の「婚家6課対象」だ。

一連の事業は、「配慮花嫁候補」や「贈り物乙女」などと、女性をモノ扱いするような名称で呼ばれている。「良家の息子と結婚させて革命の血筋をより濃くする」という、あたかも思想がDNAに組み込まれていると信じているような、疑似科学的、優生学的な考えに基づいた、現代の国際社会では認められないような前時代的な考えに基づいた取り組みだ。

ちなみに彼女らは、処女であることも重要視され、選抜過程において婦人科の健診を受ける。これもまた、「悪い血が混じってはいけない」という考えに基づくものだ。

裕仁親王(後の昭和天皇)と婚約した、良子女王(後の香淳皇后)の血筋に色覚異常の遺伝があることから、元老の山縣有朋が結婚を妨害した「宮中某重大事件」を想起させるような、旧時代的なやり方だ。

一方、20人のうちの残りの4人は、離婚または夫と死別した経験のある「寡婦6課対象」だ。良好な土台、美貌、健康を兼ね備えていることが選抜条件で、非転向長期囚や国に貢献した独身の中高齢男性、妻と離婚・死別した男性と結婚させるか、中央党幹部の家政婦として働くことになる。家政婦の場合、料理教室に6ヶ月間通った上で配属される。

情報筋は「一般的な6課対象の選抜は今までもあったが、婚家6課、寡婦6課対象を選抜せよというのは元帥様(金正恩氏)の時代が初めて」だと指摘。中央党は、金正恩氏が最高指導者の座について間もなく10周年を迎えるのに際し、「忠誠と尽くせという元帥様のご配慮だ」と宣伝していると伝えた。

婚家と寡婦のいずれの場合も、10月10日の朝鮮労働党創立日までにゴールインさせる計画だが、一方の特権階級の子息の反応は今ひとつだ。

「中央党の(幹部の)子息たちは、いくら党が結びつけてくれるとは言っても、何の感情もないままに結婚できるかと、不満を述べている」(情報筋)

お見合い写真を裏返して、1枚選ぶというトランプ遊びのような選び方に対しても不満が強く、「付き合っている人がいる」などと言ってごまかそうとしている。

恋愛結婚が一般化した北朝鮮の若者に、いくら「金正恩氏の配慮」だからと顔も知らない女性と結婚しろと強いることは、上の世代と若者世代の考え方の乖離の大きさを示していると言えるが、金正恩氏の意に背くことはできず、いやいや結婚するしかないだろう。