今月9日の建国記念日に、北朝鮮の首都・平壌の金日成広場で開かれた軍事パレード(閲兵式)と舞踏会の参加者が、自家隔離を強いられている件はデイリーNKジャパンでも既報の通りだ。

参加者はいずれもマスクをしておらず、新型コロナウイルスのクラスターが発生するのではないかとの指摘がなされていたが、その懸念が的中した。

平壌のデイリーNK内部情報筋は、軍事パレードに参加した民防衛大学の3〜40代の男女学生16人が高熱、嘔吐、呼吸困難などコロナを疑わせる症状を見せ、12日に救急車で病院に運ばれたと伝えた。

民防衛大学とは、平壌郊外の龍城(リョンソン)区域にある、準軍事組織の教導隊や民防衛の指揮官を養成する教育機関で、一般の大学とは異なり、30代以上の既婚者が学生の過半数を占める。

実は彼らは、閲兵式開催前の今月初めから、微熱などの症状があったという。大学はそれを把握しながら、雨の降る中でリハーサルを行ったため、単に風邪をひいたに過ぎないと判断し、閲兵式の指揮部に報告しなかった。

そして、風邪薬を飲ませて閲兵式に参加させたが、その後に症状が悪化。そこまでに至ってようやく中央非常防疫委員会に報告したとのことだ。委員会は第1、第2病院の救急車を動員して、患者に防護服を着せて平壌市外に連れ出した。国の隔離施設は平壌に設置されておらず、平安南道(ピョンアンナムド)の安州(アンジュ)の施設に連れて行かれたものと思われる。

委員会は民防衛大学全体を封鎖し、閲兵式に参加していない学生まで含めて、全員に寄宿舎で15日間の隔離措置、外出禁止令を下した。同時に防疫イルクン(幹部)を派遣し、大学施設に対する大々的な消毒作業を行った。

この件の報告を受けた中央党(朝鮮労働党中央委員会)は怒り心頭に発した。クラスターの発生を防ぐために、閲兵式と舞踏会参加者に対してしつこいほどの検温を繰り返すなど、徹底したコロナ対策を取っていたのに、現実は「ザル」だったからだ。

党の組織指導部は「1号行事(金正恩総書記が参加する行事)として行われた閲兵式で、発熱患者が倒れでもしたら大きな汚点となるところだった。(朝鮮中央テレビでは)録画放送をしたからよかったものの、生中継で事故が起きていたかもしれないのに、発熱患者をなぜ参加させたのか」と関係者を厳しく叱責したという。

結局、閲兵式指揮部に衛生防疫常務組として派遣されていた中央非常防疫委員会所属の防疫参謀5人が無責任さを理由に撤職(更迭)され、無報酬労働の処罰を受けたと言われている。

一方、中央党は、金正恩氏の身辺の安全に関して一切言及しておらず、いつもとは違う様子に首を傾げる人もいるという。これについて平壌市民は「元帥様(金正恩氏)と幹部はワクチンを打ったからではないか」と噂していると、情報筋が伝えた。