米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、北朝鮮当局が最近、違法薬物と「性不良行為」を体制の脅威となる「悪性腫瘍」とみなし、撲滅に向けた全面戦争を繰り広げているという。

RFAの取材に応じた平安北道(ピョンアンブクト)のある住民によれば、「今回の薬物乱用と性不良行為に対する取り締まりは、国家保衛省(秘密警察)の主導で今年1月から全国的な規模で実施されている」という。

またこの住民は、「これまでと異なり、布告文や指示文を通じて一般住民に警告する手順を省略し、不意に現場を急襲する手法で行われているのが特徴だ。道内ではこれまでに、十数人が同省の特別軍事裁判に回され、罪状が特に重いとされた被告には死刑判決が下されている」と話す。

しかし、いかに当局が厳しく取り締まろうとも、北朝鮮当局がこうした現象を根絶することは出来ないだろう。何故なら、長きにわたり極秘に付されていた権力中枢の乱れた実態が、すでに一般国民にも相当程度、漏れ伝わっており、体制腐敗の根がどこにあるのかを、多くの人々が知ってしまっているからだ。

北朝鮮の芸能界にはかつて、圧倒的な権力者が存在した。朝鮮芸術映画撮影所の総長を30年以上にわたり務めた、白民(ペク・ミン)なる人物である。

北朝鮮でこのような要職に座り続けるためには、最高指導者からの絶対的な信頼が欠かせない。白氏も例外ではなく、芸能界における彼のパワーは、金正日総書記からの強力な支持に裏付けられていた。

白氏はなぜ、金正日氏から重用され続けたのか。映画制作者として優れていたからか。あるいは、そういう部分もあったかもしれない。何しろ金正日氏は、自他共に認める映画通だった。

だが、韓国紙・東亜日報記者で脱北者出身のチュ・ソンハ氏が自身のブログで、白氏の家族の近親者から聞いた話として明かした背景は異なる。白氏は、有名女優から新人女優までを金正日氏に「献上」し続けたことで、絶対的な信頼を得ていたというのだ。

たとえばその中には、絶世の美女と言われた女優の禹仁姫(ウ・イニ)氏もいたという。

もちろん、多くの北朝鮮国民は、最高指導者と芸能界の乱れた関係を詳細に知っているわけではない。しかし、「喜び組」をはべらせた秘密パーティーの実態は30年ほども前に韓国で暴露されており、その情報は少しずつ、北朝鮮国内にも流れ込んでいるはずだ。

また、高位幹部が粛清されるたびに有名女優が消え去っていく現実を見れば、社会の裏側で何が起きているかを推察するのは難しいことではない。

では、現在の金正恩総書記はどうだろうか。今までのところ、金正日氏に関する情報ほどには具体的な話は聞こえてこないが、実態を見極めるには、いましばらく観察を続ける必要があるだろう。