北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境を封鎖し、貿易を停止したのは昨年の1月。一部では貿易が再開されているが、ごく限定的だ。米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は中国の税関統計を引用し、北朝鮮が先月、約1140万ドル(約13億円)分の食糧を輸入したと報じた。7月が約13万5000ドル(約1538万円)、8月が約79万1000ドル(約9000万円)だったことを考えると、大幅に伸びてはいる。

だが、輸入額全体を見ると、9月は約5600万ドル(約63億8000万円)に過ぎない。2019年1年間の輸入額が約27億9000万ドル(約3179億円)だったことを考えると、コロナ前の水準には遠く及ばない。

そんな中、中国と国境を接する北部の両江道(リャンガンド)で、貿易関係者を集め、思想教育を兼ねた会議が行われた。これは、本格的な貿易再開に向けてのものではないかとの見方が出ている。

両江道のデイリーNK内部情報筋は、道党(朝鮮労働党両江道委員会)宣伝部が、防疫管理局と各貿易機関や税関のイルクン(幹部)ら90人を道党の総合会議室に集めて、今月18日から4日連続で会議と講習を行ったと伝えた。講師を務めたのは、中央党(朝鮮労働党中央委員会)宣伝部の副課長、内閣の防疫管理局長、道党宣伝部長、道党組織部責任部員ら8人の責任イルクン(幹部)だ。

まず討議されたのは「思想の力でわが国(北朝鮮)第一主義、自強力第一主義が貿易活動全般に徹底して具現されるようにしよう」という内容だ。これは、国境封鎖以前のように、貿易イルクンが拝金主義と資本主義思想に染まり、カネがすべてという考えから仕事を進めていなかったか、今後、国の承認に基づいて貿易が大々的に再開されれば、検疫、防疫、輸出入などの仕事をいかなる思想を持って進めるかを確かめるものだ。

また、貿易イルクンは、社会主義と資本主義の境界線に触れることから、思想的な土台がさらにしっかりしていなければならず、言動に気をつけ、あらゆる行動が「思想的な柱」に裏打ちされていなければならないということも指摘された。

さらに、思想事業の改善、強化が対外貿易部門における生死のかかった要求で、党の政策を擁護し、革命的思想で武装した貿易イルクンだけが党と首領(金正恩総書記)と国のために役に立ち、奇跡を生み出せる、党と国が試練と難関から抜け出すために必要なイルクンになれる――という点も強調された。

そして、皆がそれぞれの持場に戻り、今回学習した内容を繰り返し復習し、思想的に徹底して武装して、今後の貿易に備えなければならないと伝えられた。

このような、思想的にどうだこうだという話には一切目新しさはなく、今までも繰り返されてきたものだ。ただし、次のような発言があった点が非常に注目される。

「国境を無条件で閉じて貿易ができないままでは生きていけないということは党もよく知っている」
「いまにすぐにでも貿易の承認が出たら、党の政策通りに考えて行動するよう、貿易イルクンの思想教養を強化せよというのが党の方針」

つまり、会議の目的が、現状ではごく一部に限られている貿易の全面的再開に向けた準備であるということが明かされたということだ。実際、会議に参加した貿易イルクンの間からは「国境封鎖が解ける日が遠からず訪れるから、今回の会議を開いて思想教養をしたのではないか」という話が聞こえたという。

ただ、今年の春先に大規模な消毒場が完成し、新義州(シニジュ)税関が業務を再開、貿易のワック(取扱い枠)の申請受付と発行が行われるなど、再開に向けて期待が高まったが、実際に認められたものは緊急性の高い食糧や肥料などごく一部の品目に過ぎなかった。また、北朝鮮国内でワクチン接種がほとんど行われていないことなどを考えると、実際に貿易が再開されるまでは、さらに時間がかかる可能性がある。

ただ、北朝鮮国内は、国境封鎖、貿易停止による深刻な物資や食糧の不足で、にっちもさっちも行かない状況に陥っており、これを乗り切るには早期の国境の開放は避けられないだろう。