中国との国境に接する北朝鮮・両江道(リャンガンド)の金亨稷(キムヒョンジク)郡には、先月19日から15日間の封鎖令が敷かれている。これは新型コロナウイルスの感染が広がったからではなく、中国からの密入国者が摘発され、当局がウイルスの流入を恐れたための措置だ。

朝鮮中央テレビ、労働新聞など国営メディアが、オミクロン株の脅威を連日報道して警戒を訴えている中、同様の密入国事件、封鎖令は他の地域でも実施されている。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

先月中旬、20代の脱北男性が、国境を流れる鴨緑江を渡り平安北道朔州(サクチュ)郡の清水(チョンス)労働者区から密入国、知人の家にしばらく滞在後、ポリバス(個人経営のバス)に乗って、2年ぶりに鉄山(チョルサン)郡梨花里(リファリ)の実家に戻った。

その後、同じ村の農場の水産作業班の班長の妻が脱北男性の実家を訪れ、彼がいるところを見かけた。帰宅後、夫である班長に「あの家の息子は行方不明になっていたが、帰ってきたみたい」と話した。それからしばらくして、班長はそのことを地域の安全員(警察官)に伝え、そのわずか20分後に、鉄山郡安全部(警察署)が脱北青年の家を急襲し、逮捕した。

北朝鮮で行方不明者は、単に消息が分からないと認識されるのではなく、脱北した可能性のある人物として、政治事件として扱われる。そのため、彼の家も目をつけられていたのだろう。ちなみにこの男性、海上での密輸を営んでいたが、韓流コンテンツを持ち込んだことがバレて、追手から逃れるために、誰にも告げずに脱北していた。

この事案は、鉄山郡の非常防疫指揮部から平安北道非常防疫指揮部を経て、中央非常防疫易指揮部に報告された。そして中央の批准を受けて、先月22日から梨花里と、密入国地点の清水労働者区の2ヶ所に対して封鎖令が下された。期間は20日間で、住民は一切の外出が禁じられている。

突如として外出禁止令が下され、何の準備もできなかった村人たちは「どうやって生きていくのか」「餓死者が出かねない」と嘆きの声を上げている。

逮捕された男性は、鉄山郡保衛部(秘密警察)に留置され、所有していたかなりの額の米ドルと中国人民元はすべて没収された。そして、平壌の国家保衛省(秘密警察)のイルクン(幹部)の取り調べを受けているが、同省は昨年7月、韓国に住んでいた脱北男性が開城(ケソン)市を通じて密入国した事件同様に、非常に重い事案として扱っているとのことだ。

今のところ、住民の反発や実効性を考慮したのか、封鎖令が下されているのは2つの村に限られているが、事の成り行きによっては、郡全体、さらには平安北道全体がロックダウンされる可能性もある。

一方で、逮捕された男性の家族に加え、移動に使ったポリバスのドライバーと車掌も、安全部に勾留されている状態だとのことだ。

また、国境警備に不備があったとして、地域担当の国境警備隊の中隊長、政治指導員、保衛指導員らに対して解任、撤職(更迭)、不名誉除隊、革命化(奥地への追放)などの処分が下された。さらには中隊の人員も総入れ替えとなった。同時に、国家保衛省と国境警備司令部は、地域の国境警備旅団、連隊、大隊、中隊に対して検閲(監査)を実施している。