「最近、食堂をはじめとした一部の社会奉仕施設(サービス業)が、規定に背いて密かに個室、マッサージルーム、チムジルバン(サウナ)を設置し、客を引き入れ、一部な退廃的な行為まで繰り広げている」(北朝鮮・新義州<シニジュ>の情報筋)

ここで言う「退廃的行為」とは売春などを指すが、北朝鮮の刑法249条「売淫罪」は「売淫行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処し、罪状の重い者には5年以下の労働教化刑に処す」と定めている。また、行政罰を定めた行政処罰法220条「売淫行為」は「売淫行為を行ったり、それを助長、仲介、場所を提供した者には罰金または3ヶ月以下の労働教養処分とする」としている。

それに加え、「反動的思想・文化排撃法」による取り締まりも行われてはいるものの、ここに来て復活の兆しを見せている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が詳細を伝えている。

情報筋の話では、かつてレストラン、マッサージ屋、銭湯(サウナ)、カラオケなど社会奉仕施設では、不倫や売春を含めた「黄色文化」(いかがわしい行為)が広く行われていたが、2016年に金正恩総書記の厳命を受けて全国的な検閲(監査)が行われ、多くの関係者が処罰され、下火になっていた。

ところが、「コロナ禍で漂い続ける重苦しい空気にストレスを溜めた一部富裕層の間で、これらの行為が再び横行するようになった」(情報筋)とのことで、当局は取り締まりに乗り出した。

高級マンションが立ち並ぶ新義州市内の彩霞洞(チェハドン)のあるレストランでは先月末、従業員と女性客3人、男性客3人が賭博に興じていたところに、夜間巡察隊に踏み込む出来事があった。調査の結果、このレストランは個室、マッサージルーム、チムジルバンを無断で設置し、資本主義黄色文化を楽しめるようになっていたとのことだ。

報告を受けた中央は、今回の事案を深刻な非社会主義行為(社会主義にそぐわないと当局が判断した行為)とみなし、司法機関が合同で市内の社会奉仕施設に対する集中検閲に乗り出した。

なお、この事件で摘発された関係者は、現在新義州市安全部(警察署)に勾留され取り調べを受けており、反動的思想・文化排撃法に基づいて重い判決が下されると思われ、本人らもその家族も心配でしょうがない様子だとのことだ。

また、ワイロを受け取って営業を黙認していた機関の幹部も責任を問われ、処罰の対象となる見込みだ。

取り締まりは、新義州より南東に80キロ離れた定州(チョンジュ)でも行われている。現地の情報筋は、市の行政機関の幹部に金品を渡し、違法な店を立ち上げ、昼夜を分かたず客を引き入れ退廃的な営業をしていた業者5人と、女性従業員が摘発されたと伝えた。

今回の取り締まりの対象は、主な顧客層である高位幹部、トンジュ(金主、新興富裕層)、業者、従業員だ。寒さと空腹に耐え日々を過ごしている一般庶民は、当局がいかなる処分を下すか、怒りをもって注視している。

退廃的な営業を行った側、利用した側は双方とも、カネと権力を持っており、結局は軽い処罰で済まされるのではないかとの話が出ている。カネとコネさえあれば、政治犯罪や、金正恩氏の直接の指示があったものを除けば、もみ消すことが可能なのが北朝鮮の司法の現実だ。