北朝鮮メディアは今月1日、朝鮮人民軍陸軍第5軍団長だった李太燮(リ・テソプ)氏が、社会安全相に任命されたことを明らかにした。社会安全相は、日本の警察庁長官に相当する。

このポストには昨年9月、張正男(チャン・ジョンナム)元人民武力部長が就任したばかりだった。治安を預かる重要ポストが、たった4カ月で交代した背景には何があったのか。

北朝鮮のデイリーNK内部情報筋が伝えたところでは、発端は平安北道(ピョンアンブクト)の大館(テグァン)郡にある、軍需工場の爆発事故だった。情報筋は、事故が起きた具体的な時期に言及していないが、いずれにせよ張正男氏の社会安全相就任後のことだという。

爆発を受け、中央からは「収拾のため急ぎ社会安全軍を投入せよ」との命令が下された。社会安全軍は、社会安全相の傘下に置かれた予備軍事組織だ。軍需工場での爆発事故ならば、危険物への引火による被害の甚大化が懸念されたはずだ。敵国による工作に対する防諜、現地での治安維持の必要性も想起されただろう。

ところが、総指揮官となるべき張正男氏は、「個人的な事情」で連絡のつかない状態だったという。事故処理は社会安全軍の参謀長が指揮し、その場はなんとか乗り切ったが、後にトップが不在だったことが知れて、党規律調査部の指摘を受けたという。「個人的な事情」での職務怠慢は、金正恩総書記が特に激しい怒りを見せる問題だ。

それにより交代させられたとされる張正男氏だが、果たして今後、彼の身に何が起きるのか。今のところ、処刑や収容所送りなどといった物騒な話は聞こえてきていない。

しかし周知のとおり、金正恩氏はごくごく些細なことで部下を処刑してきた「前科」がある。これから時間を置いて、何らかの重大情報がもたらされる可能性はゼロではない。

一方、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)元軍総政治局長や金元弘(キム・ウォノン)前国家保衛相のように、失脚後に処刑されたとの情報が浮上しながらも、長きにわたり確認されていない例もある。

張正男氏もまた、同じように「闇から闇」へと葬られてしまう可能性が否定できない。