コロナ鎖国下の苦境にある北朝鮮では、国営工場や機関などから窃盗事件が相次いでいる。勤め先にある設備や産出物を盗んで売り払い、食糧に換えているのだ。

部外者では接近できないところにアクセスできる職権を乱用した犯罪だが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、食糧倉庫で起きた窃盗事件について伝えている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)漁郞(オラン)の情報筋によると、郡内の糧政事務所(食糧事務所)で最近、倉庫に保管されていた穀物が盗み出される事件が起きた。咸鏡北道検察所が捜査に乗り出し、倉庫の警備に当たっていた保衛員(秘密警察)、隊長を含めた保衛隊全員が加担していたことを暴き出した。

彼らは、各地域の保衛部から忠誠心や党性(忠誠心)の強いとして選抜された者で、実弾を込めた銃を装備して倉庫の警備を行い、毎週2回の実弾射撃訓練と軍事訓練を受けていた精鋭部隊で、許可なく倉庫に近づく者を銃撃できる権限を与えられている。通常、ひとつの事業所に14人が配属され、うち半分は女性だ。

それでも男性隊員が不正行為を行うかもしれず、それを防ぐために、さらに党性の強い女性隊員を配属させていたが、彼女らも今回の事件に加担したり、見て見ぬ振りをしたりしていたことが判明した。

そこまで厳重に管理されていたのは、倉庫に保管されていたのが、戦争など有事のための備蓄米だったからだ。その重要性を鑑みて、精鋭部隊の保衛員に警備を任せていたのだが、そんな彼らが盗みに加担していたことが広く知れ渡るのは好ましくないと考えたようで、当局は事件のことを徹底して秘密にしているという。

漁郞郡保衛部で取り調べを受けている女性隊員は、そのほとんどが「生理用ナプキンや石鹸、歯磨き粉など生活必需品を買うために食糧に手を出した」と自白した。咸鏡北道保衛局は、理由の如何を問わず、国の食糧に手を付けたことを非常に重く見て、誰がどれだけ盗み出したのかを詳しく調べている。

保衛員が国の食糧に手を付ける事件は、他の地域でも起きている。

清津(チョンジン)の情報筋は、市内の複数の糧政事務所で窃盗事件が頻発、咸鏡北道保衛局が捜査に乗り出したと伝えた。容疑者として逮捕されたのは、糧政事務所の幹部と警備に当たっていた保衛員だった。

事件の顛末に情報筋も驚きを隠せずにいる。

「国の信任を受けて食糧倉庫の警備にあたっていた保衛員が、食糧を盗むなんて、誰が想像しただろうか」(情報筋)

事件の背景には、食糧配給の欠配、遅配、質や量の低下があるものと思われる。かつての大飢饉「苦難の行軍」の時代にも途絶えることのなかった保衛員や安全員(警察官)に対する配給だが、2020年1月のコロナ鎖国以降、異変が起きている。

現地のデイリーNK内部情報筋は、昨年10月末に実施された配給について、量が2割削減され、家族の分は配給されず、糠混じりの玄米だったと伝えている。