本格的に始まった北朝鮮の「田植え戦闘」。不足する農村での働き手を補うために、都市部の住民が、近隣の協同農場に動員されるのだが、どういうわけか死者が続出しているという。詳細を、黄海北道(ファンヘブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

先月、黄海北道で農作業と関連して亡くなった人の数は50人。すべてがトラクターの事故によるものだ。北朝鮮には、舗装も補修もされていない道路が数多く存在するが、古いタイヤを装着したトラクターでの移動または作業中に、タイヤが破裂するなどして事故につながったケースがほとんどだという。

また、破裂したタイヤの破片の直撃を受けて負傷する人も相次ぎ、その正確な数はわからないものの、相当な数に達すると見られる。

北朝鮮には、国産のタイヤはあまりなく、ほとんどを輸入に頼ってきた。しかし2020年1月のコロナ鎖国以降、タイヤ不足が深刻化。すり減ったりパンクしたりしたタイヤを補修しながら使っている状況だという。

情報筋が、事故の別の原因として挙げたのは、トラクター運転手の栄養問題だ。

「冬の間、まともに食事を取れず体が弱っていたところに、春になって体がダルくなり、集中力が落ちて事故を起こす」(情報筋)

毎年のように農業不振にあえぐ北朝鮮。コロナ鎖国による肥料不足で、それに拍車がかかり、食糧が底をつく「絶糧世帯」が続出している。また、深刻な少雨の影響で、期待されていた麦が枯れてしまい、まともに栄養が取れていない状態で、無理に作業を行って事故を起こすケースが多いようだ。

さらに、農業機械の部品が輸入されず、故障が頻発。まだ動く機械を酷使しつつ農作業を行っているが、酷使されているのは運転手も同じだ。疲労が事故を招くとの指摘もある。金正恩総書記が、昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会で農業問題の解決を力説しただけあって、現場にかかるプレッシャーは相当なものだろう。

黄海北道では、農繁期に合わせて食糧配給が行われているが、ごく限られた地域にとどまっているという。