2014年のドンバス戦争で、親露派がウクライナ東部のドネツィク州、ルハンシク州、いわゆるドンバス地域に立ち上げたドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国。

傀儡国家として全世界のほとんどの国から承認を受けていないが、その数少ない例外が北朝鮮だ。ドネツク人民共和国を率いるデニス・プシリン氏は、今年8月15日、金正恩総書記に光復77周年の祝電を送っている。また、北朝鮮外務省は、先月にロシアの占領下にある4州での「住民投票」に関し、ロシア政府を支持する談話を出すなど、交流が行われている。

北朝鮮からロシアに派遣された2万人とも言われる労働者の一部が、これら地域に再派遣されているが、それを嫌がり脱北する事件が先月発生したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

RFAは、ロシアの高麗人(朝鮮系ロシア人)情報筋の話として、最近、建設現場で北朝鮮労働者の姿を見かけないと伝えた。別の情報筋も、ウラジオストクの現場で、北朝鮮労働者の姿が見えなくなったと伝えた。

ロシアに労働者を派遣しているのは、対外建設指導局傘下の7総局、8総局、大興(テフン)指導局、航空連合委員会、朝鮮労働党ホテル管理局、貿易部、国家保衛省(秘密警察)、対外経済省、軽工業省など多岐にわたる。また、未来建設会社、南江(ナムガン)貿易会社、チフン建設会社の労働者は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士を労働者として雇い入れている。

対外建設指導局傘下の組織は、30人から50人、多い場合は200人以上の労働者をひとまとめにして、建設現場に送り込む。彼らの間で、ドンバスに派遣させられるとの話が流れ、動揺が広がった。そこで、現場に送り出さずに待機させよとの指示が、現場幹部に対し先月初めに下された。

ところが、労働者はもちろんのこと、幹部の間ですら脱北する人が相次いだ。いずれも、ロシアがウクライナに侵攻したことをよく知っているからだ。

今月4日現在、ウクライナ軍はドンバスへの進撃を進め、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の2つの傀儡国家の支配領域に迫る勢いで、そんなところに派遣されれば、戦争に巻き込まれるリスクが非常に高いのは、火を見るよりも明らかだ。

ウラジオストクでも状況は同じようで、労働者の管理を行っている複数の幹部が姿を消す事件が起きたとのことだ。こちらはドンバス派遣を恐れたことよりも、毎年年末に行われる国家経済課題の遂行決算がきっかけらしい。

決算では年間の課題金(上納金のノルマ)や、労働者の1年分の給料の精算などが行われるが、一部ロシア企業から工事代金を受け取れず、上部から処罰されることを恐れたためというのが情報筋の説明だ。

また長時間労働に加え、ほとんど給料が支給されない状態に苦しめられている労働者の中には、幹部に逆らい、処罰を恐れて脱北してしまう者もいるとのことだ。それに加え、ウラジオストク駐在の北朝鮮領事館から、ドンバス行きに向けて待機せよとの指示が下されたことで、脱北する幹部や労働者がさらに増加しているという。