北朝鮮では、先月末までに全国的に収穫が終わり、現在は脱穀などの作業が行われている。地域によっては、それらの作業も全て終わったが、農民の表情は非常に暗いという。

平安北道(ピョンアンブクト)の住民は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、「各協同農場で脱穀が終わろうとしているが、作況が悪く、軍糧米(軍に納める穀物)と国家計画分(ノルマ)を納めると、4人家族の場合で半年分の食糧しか残らない。農民も農場幹部も暗い表情を浮かべている」と伝えた。

営農資材の不足や相次ぐ自然災害による不作だが、国はそれらを考慮せず、農場幹部の総和(総括、決算)を行う計画を立てている。その対象になる幹部らは、処罰を逃れるために、報告をごまかす手はずを整えるようと奔走しているという。

蔓延するこの手の虚偽報告だが、当局は対策に乗り出した。最高人民会議常務委員会が今年5月31日に採択した「ホラ防止法」がそれだ。

韓国の国家情報院が入手した法律の条文によると、この「ホラ」の定義は「功名心、利己心、責任回避など古ぼけた思想に染まり、自らの部門、単位(職場)の実態を虚偽報告し、国の政策執行と人民生活に厳重な害毒を与える結果をもたらす反国家的、反人民的行為」(第2条)というものだ。

黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋は、道内でこの法が適用されたと思われる事例について伝えている。

載寧(チェリョン)郡と安岳(アナク)郡の某協同農場の委員長は、穀物生産の模範として評価されていたが、最近行われた検察所による検閲(監査)で、生産量を虚偽報告していたとして摘発された。

農場は、その年の農業に必要な営農資材などの購入のために借金をして、収穫の一部を返済に充てる。委員長らの虚偽報告の手法は、この返済分までを成果に含めるというものだった。

2人の農場管理委員長に下された処分は革命化(下放)だ。通常は中央や地方の高位幹部に下されるものであり、農場の委員長に革命化処分が下されるのは異例のことだという。ただ、時が経てば呼び戻される高位幹部の革命化とは異なり、他の地域の平農場員として左遷され、元いた場所には一生戻れないという。

農場管理委員長は、国家計画分を納めなければならないという義務を負うと同時に、農場所属の農民の生活を支えなければならないという義務も負っている。農民の手元に食糧を残すために、実際の収穫量より少なめに報告したり、上述の通り、ノルマ未達成による処罰を免れるためや、今回のように評価されたいがために多めに報告したりと、様々なケースがある。

コロナ鎖国による食糧難で、もはや働く気力が残っていないという農民が増える中、労働力を確保して生産量を保つために「バレないように適量を持っていけ」と、国が厳しく禁じる穀物の横領を黙認することもあるという。

そんな虚偽報告があふれる状況を打開するために採択された「ホラ防止法」だが、情報筋は「虚偽報告を処罰するなら、わが国(北朝鮮)の幹部の9割以上が処罰されなければならなくなる」として、農場のみならず、虚偽報告が国のすべての部門で虚偽報告が蔓延していると述べた。

また別の情報筋は、農民の間には「国の経済が苦しいのは党と首領(金正恩総書記)、国を騙す幹部たちのせいだから、そんなやつらを見つけ出し、経済問題で元帥様(金正恩氏)に心配をかけないようにしなければならない」という意見があるという。その一方で、「ホラは国が人民に吹いているものではないか。もう少し我慢すれば良い暮らしができると数十年間も騙してきたのに、良い暮らしをしているのは幹部だけで、今頃になってホラ防止などと言っている」と法律を皮肉る声も上がっていると伝えた。