政権の座について以降、首都・平壌市内に次から次へとタワーマンションを建て続けている北朝鮮の金正恩総書記。倉田(チャンジョン)通り、未来科学者通り、黎明(リョミョン)通りのタワマン団地に続き、「平壌市5万世帯住宅建設構想」の一環として建てられたのは寺洞(サドン)区域の松花(ソンファ)通りのタワマン。高さ300メートル、80階建てで、すでに完成したものとしては北朝鮮で最も高い建物だ。

他の国なら高層階ほど人気があるが、北朝鮮ではその逆だ。

平壌の情報筋は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、幹部には10階以下の部屋が割り当てられ、住宅建設プロジェクトに多額の募金をした――つまり投資をした人には20階以下、その他の一般市民には20階以上の部屋が割り当てられたとして、不公平だとの声が上がっていると伝えた。高層階が嫌われるのには理由がある。

「電気供給が不安定なために頻繁に停電する状況で、80階建ての超高層マンションに住むということは、常に最悪の状況に追い込まれるかもしれないということを意味する」(情報筋)

停電になればエレベーターも水道も止まってしまう。つまり、水を使うには階段で地上まで降りて汲み、運び上げなければならない。参考までに、松花通りのタワマンと同じ高さのあべのハルカスの階段は、1600段以上だ。水の入った重いバケツを持って登るのは相当な苦行と言える。

国営メディアが大々的に宣伝しているにもかかわらず、むしろ悪評が広がるばかりのタワマンに対して、当局が対策に乗り出した。

デイリーNKの内部情報筋によると、平壌市人民委員会(市役所)は先月15日から20日間、80階建てマンションのエレベーターに午前5時から午後11時まで電気を供給するように指示を出した。ちなみに、規定では朝夕の2時間だけ運行することになっている。

これは、冬の間に食べるキムチを大量につける「キムジャン」の季節に合わせて、大量の材料を運ぶことに配慮したものだ。また、暖房用の燃料を運ぶためでもあると情報筋は説明した。

今回の方針は入居者はもちろん、市内中心部に住む住民にも好評で「郊外の寺洞区域の松花地区80階建てマンションの高層階は人の住むところではないという認識が、少しだけ変わった」との反応が聞かれるとのことだ。

ただ、エレベーターの運行に必要な電気代は、住民の負担となる。先月29日に開かれたタワマンの人民班(町内会)の会議で、エレベーターを20日間延長運行した電気代は、3階以上に住む入居者が均等に割り振られて、年末に請求されることが伝えられた。

かつてはタダ同然だった電気代だが、この数年で大幅に引き上げられた。いくらになるかはわからないが、20日間楽をした代償は意外に高く付くかもしれない。