鉱物資源が非常に豊富なことで知られる北朝鮮には、金、銀、銅、鉛、マンガン、石灰石など200種類が埋蔵されている。ただ、それぞれの埋蔵量は明確でない。北朝鮮の2005年の調査によると、採掘可能な石炭の埋蔵量は60.7億トン。一方で、韓国の工業振興公社の2003年の推算によると30億トン。このように「鉱物天国」とも言える北朝鮮だが、採掘の現場は地獄そのものだ。

労働環境は極めて悪く、重大事故が頻発する。誰も行きたがらず、革命化(下放)や追放の行き先、つまり流刑先として使われている。

電力や装備の不足で操業をやめてしまった炭鉱も少なくないが、極貧生活を強いられている地元民が、坑道に入って事故に遭う例が少なくない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

北朝鮮の多くの労働現場では、安全装備が配給されず、まともな食糧配給が行われず栄養失調寸前の状態で、むちゃな工期を無理やり達成するために長時間労働に強いられた結果、事故につながる。当局が全く対策を取っていない訳でははないが、充分でない。

民間人が勝手に行う現場ではなおさらだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、鏡城(キョンソン)郡の生気嶺(センギリョン)労働者区で先月8日、自分たちで掘った坑道に入って石炭を掘り出していた地元民2人が、土砂崩れで生き埋めになって死亡する事故が発生したと伝えた。

生気嶺炭鉱は、朝鮮が日本の植民地支配下にあった時代に操業を始め、褐炭や粘土を多く産出していた。また、周囲にはその粘土を使った陶器や碍子の工場などがあった。ところが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころに他の多くの操業が止まってしまった。その後、なんとか操業再開に漕ぎづけたものの、炭鉱に関しては今に至るまで操業ができずにいる。

そこに目をつけた地元民は、3〜4人1組で坑道をシャベルなどで数十メートルを掘り進め、坑道をビニール幕で覆い、換気を確保しつつ、石炭採掘を行っていた。支柱のない「裸坑道」の状態だ。最近は「かまどが飯を食らう」と言われるほど燃料費が高く、これといった産業のない生気嶺の人々は、このように掘り出した石炭を街中の市場でたらい1盛り2000北朝鮮ウォン(約32円)で売って、生活を成り立たせていた。

しかし、現場では事故が多発している。凍結した地面が溶ける春と雨の多い季節に、手掘り坑道の崩落事故が多発する。また、窒息事故も後を絶たない。情報筋の話では、苦難の行軍以降の20数年で、死者の数は100人をはるかに超えるという。

咸鏡北道の幹部は、道内各地の炭鉱で、個人が作った手掘り坑道が崩落して人が亡くなる事故が複数起きているとの報告を受けていると述べた。

穏城(オンソン)、会寧(フェリョン)、明川(ミョンチョン)など、各地に同様の坑道が多数存在し、春には崩落事故、夏には窒息事故が多発しているという。当局は、このような行為を禁じてはいるものの、他に生きていく方法がないためどうしようもないと、ほとんど放置している状態だ。

この手の事故は、原始的な手掘り坑道に限らない。それなりの設備があり、正常に操業を続けている鉱山でも、各地の建設現場でも事故が多数発生、貴重な人命が失われ続けている。

安全装備が配給されず、まともな食糧配給が行われず栄養失調寸前の状態で、むちゃな工期を無理やり達成するために長時間労働に強いられた結果、事故につながる。当局が全く対策を取っていない訳でははないが、充分でない。

これが、ミサイルや人工衛星を打ち上げる国の、お粗末極まりない実態だ。