16年目のシーズンを終えた独立リーグ・四国ILp。今年のドラフトでは育成を含め3選手をNPBに送り出すなど、存在感を見せ続けている。今季は新型コロナの影響で開幕が延期され、当初は無観客試合を行うなど、今までにない試練に直面。リーグを運営する株式会社IBLJ代表取締役社長の馬郡健氏に激動のシーズンを振り返り、今後の四国ILpのあり方について語ってもらった。

 −今季を振り返って

 「上を目指そうと思って四国に来てくれた選手たちに申し訳ない気持ちと、感染を拡大させてはいけない責任の間で悩みながらのスタートになったが、1試合も欠かさず最後までやり遂げられた」

 −新型コロナの影響で開幕が6月に延期された

 「(今年4月の緊急事態宣言で)先が見えなかった。開幕を延期すれば選手を抱え込んだままになる。彼らの将来を考えたときに、それは正しい判断なのか。一度解散してまた集まる手もあった中で、そのままコロナが落ち着くのを待つのか、判断に迷った」

 −このような状況下で野球をすることへの葛藤もあったのでは

 「四国の医療資源は限られていて、我々は地域に支えてもらいながら野球をさせていただいている。迷惑をかけるのは本末転倒。一方で、スポーツのある日常、ということも言われだして、野球興行をする意味もあるんだ、と。答えはないので、ニーズを見極め続けている」

 −相当難しい作業だ

 「自治体も、ファンもそれぞれ考え方は違う。ただやめるのは簡単だけど、戻すのは難しい。15年続けてきたものをウイルスでやめてしまうのは違うと思った」

 −試合の実施が前提としてあったのか

 「選手にとってこの1年は今年しかない。ドラフトでは年齢も重要。もし練習も試合もできない1年があって、年齢を重ねてしまったら、世界が変わってしまう。そこはすごく考えた」

 −野球と感染リスクの板挟みに

 「ここまで続いてきたものをどうやって存続させるか、を悩んだ。支えられて16年目、それをゼロにしてしまうのは…。支えられた15年を尊重するということがどういうことなんだろう。その思考に追い込まれた部分はあるかもしれない」

 −昨年11月、社長に就任した

 「僕自身が大学まで競泳を続け、大学の監督(慶応義塾体育会水泳部競泳部門)も務めたこともあり、会社を立ち上げる前はマーケティングの仕事をしていた。リーグ運営にはマーケティング的な要素がある。自分の中にあるアスリートを支援したい気持ちと、ビジネス的な側面の両方を運営に生かせるのではと思っている」

 −就任から目指した方向性は

 「コンプライアンス(法令順守)、ガバナンス(内部統治)、アカンタビリティ(説明責任)という、スポーツマネジメントに必要な要素を、4球団とリーグに導入したいと。地域に支えられている存在なので、透明性がないといけないし、誰から見ても応援できる状態にしたい」

 −今季取り組んできたことは

 「4つの球団と1つの会社が同じ方向を向き、情報共有、意思伝達をスムーズにするため、5社で同じシステムを使うようにした。それ以前は試合のセッティング一つで、ものすごい数の電話とメールが飛び交っていた。職員がそこに時間を取られ、本来向き合わないといけない、地域やファンとの時間が減って、リーグの価値を上げることはできない。定常業務はシンプルに、空いた時間でファンやスポンサーと向き合うために使おうと」

 −今季は4球団全てでオンライン中継を実施した

 「無観客でスタートして、お客さんに見てもらわないと興行をする意味はない。実験的にやっていた球団はあったが、このタイミングで全球団オンライン中継してみようと。大変なのは当然で、やりきれるかなとも思ったが、予想よりも見てくださる人がいた。オンラインで見て『今度球場に行きます』という声もいただいて、有観客でできたらやめようか、という話もあったが、反応が良かったので各球団が最後まで続けた、という感じ。踏み出した一歩目は必要に迫られてだったが、踏み出したらいいことがたくさんあった」

 −今季で出た課題は

 「過密日程によって、最後はみんな疲弊してしまった。限られた時間しかなかったので、なんとかスカウトの方々に来ていただく時間をつくりたくて、どうしても試合を減らしたくなかった。来年は基本的には3月終わりに開幕して、9月中に終わる。週末や祝日を中心に日程を組んで、できるだけお客さんに球場へ足を運んでもらいたい」

 −今後の展望は

 「やはりNPBに行く人を増やしたい。九州に独立リーグができても、四国の野球はレベルが高いんだぞ、と。16年やった実績がありますし、輩出したNPBの選手も多い。そのブランド力を使って、独立リーグの中でも抜きんでた存在に」

 −四国ILpが目指すべき場所は

 「来年のコロナの影響は計り知れないが、今年で一度ゼロから考えて良い状態になった。野球を突き詰めることはもちろん、地域ともう一度向き合って、お客さんに楽しんでもらって、野球をさせてもらっている環境に感謝して、地域に還元していく、というストーリーを大事にしないといけない。今年は観客数は減ってしまった。でもコロナのせいにするんじゃなくて、新しいことにチャレンジしていきたい」

 

 馬郡 健(まごおり・たけし)1979年4月3日生まれ、41歳。東京都出身。慶応大から電通を経て、IT企業を経営。19年11月にIBLJ社長就任。日本独立リーグ野球機構会長も兼任する。過去には慶應義塾体育会水泳部競泳部門監督を務めた。趣味は泳ぐこと。四国での仕事中はプールを探し回っている。