6月初旬頃までに摘まれたお茶は「新茶」と呼ばれる。ならではの風味が楽しめるため、各飲料メーカーは、この時期、新茶を使用した商品を発売するなどの動きを見せるのが、なかば恒例となっている。

 新茶の季節に呼応するように、お茶の消費量も毎年5月にピークを迎える。家計調査によれば、全国での支出額は5月には500円前後に到達。反対に、毎年夏場は200円台と低くなる。5月は2倍ほど支出額が増加するわけだ。

 ちなみに、この時期に最もお茶を消費するのは、やはり“お茶どころ”の静岡市で、支出額は4,261円(2023年5月)。2位の相模原市の1,280円(同)に圧倒的な差をつけている。

綾鷹、生茶ほか…一新されたCM

 さて、今年は新茶の季節に合わせてか、緑茶飲料をめぐって業界では大きな出来事が起きた。各飲料メーカーが緑茶のCM、アンバサダーを一新したのである。

 コカコーラは「綾鷹」の新アンバサダーに宇多田ヒカル、キリンは「生茶」のCMに高畑充希と鈴木亮平、サントリーも「伊右衛門」のCMに堺雅人と古川琴音を起用した。また、アサヒは「颯」のCMにヒコロヒーと黒柳徹子を起用している。

 伊藤園の「お〜いお茶」のグローバルアンバサダーに大谷翔平が就任したことも全国の注目を集めた。

 各メーカーが総力を上げて、プロモーションを行なっているようだが、このようなリニューアルの効果はいかほどなのだろう。

 超一流タレント・アスリートゆえに起用にかかるギャランティも数千万円はくだらないと思われ億を超える場合もありそれをペイするほどのリターンはあるのだろうか?

販売数、多くが「変化なし」のなか…

 飲料メーカー関係者は、内情をこう話してくれた。

「各メーカーは、春のリニューアルに合わせ、タレントを使ったテレビCMを中心とする広告に力を入れるのが通例です。ドラッグストアやスーパーマーケットでは安売りが行われるため、それが販売数の増減を左右することも少なくはありません。だから定価販売が基本であるコンビニの売上が、価格ではない、"純粋"な人気をはかるバロメーターになると思うのですが……大手コンビニの販売数をみると、残念ながら前年差はほとんどないようで……」

 では、先に触れた商品の実際のコンビニの販売数はどうだったか。某大手コンビニ関係者が語る。

「各メーカーの今年と昨年の5月販売数を比べました。『お〜いお茶』は何も変わりませんね。『生茶』『伊右衛門』も前年差は、ほぼありません。『綾鷹』は、今年はコンビニ限定で他社の600mlを超える650mlにサイズアップしていて、週あたりの販売本数で3〜4本は増えたように見えます。一方、『颯』は昨年のブランド立ち上げの反響もあってか、前年の6掛けくらいまでダウン。売れてなさすぎます」

 大谷翔平効果で「お〜いお茶」の東北地方の1店舗あたりの販売本数が25.5%増になったという報道もあった。とはいえ、全国レベルで見ればあまり変化はなかったのかもしれない。

 今や新CMやアンバサダー起用では、大幅な売り上げ増効果はないということだろう。

「綾鷹」と「颯」の差は

 もっとも、ブランディングが完成しているブランドは、継続的なイメージアップを行う販促展開は必要だ。「綾鷹」はコンビニ限定商品のサイズアップを行い、販売は好調とのことだった。こうしたブランドが定着している商品は、増量などの直接的な顧客の支持を得る企画が、今後は大事になるのかもしれない。

 一方、昨年発売された「颯」は、2年目でもブランドが構築できていない様子がうかがえる。他社の攻勢と根強いプライベートブランド商品の浸透が、コンビニにおいては4割前後の売上ダウンに直面したのだろう。

 いち消費者目線で言えば、タレントのギャラやCM制作費のぶん、価格を下げてほしい気持ちもなくはない。ただ、企業としてはイメージアップを継続させ、ブランドを確立するためにはCMやアンバサダーのリニューアルは必要ということだ。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部