虎の子

 日本郵政の株式について政府は、売却益4兆円を確保する計画で、2回の売却でおよそ2兆8000億円を得た。しかし3回目の売却時期が不透明となっている。原因は2019年6月に発覚した「かんぽ生命」の保険の不適切販売。この問題が日本郵政の株価低迷を招き、政府の日本郵政株の売り出し計画に狂いが生じたわけだが、実は、かんぽ生命以上に深刻な問題を抱えるのは「ゆうちょ銀行」といわれている。

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 政府は、東日本大震災の復興財源などに充てるため、日本郵政株を19年秋にも売却する予定だった。残り1兆2000億円を市場から吸い上げるには、日本郵政の株価が1132円以上でなければならない。ところが現時点(19年11月)では1050円前後で、新規上場時の初値1680円を4割も下回る低空飛行。

 そこにもし、ゆうちょ銀の「時限爆弾」が爆発すれば、売り出し計画そのものが頓挫しかねないほどなのである。ある日本郵政幹部によると、

「(子会社の)日本郵便との間で銀行代理業務にかかわる委託契約を締結し、郵便局内にゆうちょ銀の代理店が設けられているのですが、その委託手数料として毎年6000億円を日本郵便に支払っています。配当金はじめ、そうした委託手数料の支払いを支えているのは、ゆうちょ銀にとって“虎の子”の満期有価証券の評価益です」

評価益で底上げ

 ゆうちょ銀は一旦買い入れた債券などは売却せず、償還されるまで保有し続けるのが主な投資パターンだという。その結果、15年の上場時には、満期有価証券の評価益は4兆円近くにも達した。しかし、それ以降、毎年5000億円のペースで償還されているため、19年9月末の段階で7500億円にまで萎んでしまった。

 ゆうちょ銀の収益は、その評価益で底上げされているのが実態だったが、虎の子はもはや、その先2年分しか残っていないのだ。これが、ゆうちょ銀が抱える時限爆弾の正体である。

 評価益が底を突いたあとは、それまでのように配当金や委託手数料の支払いを続けられるはずもない。ゆうちょ銀そのものが経営難に陥りかねないばかりか、ゆうちょ銀の株も紙くずになる可能性が生じているわけだ。

「週刊新潮」2019年11月28日号「MONEY」欄の有料版では、ゆうちょ銀の収益構造と問題点を詳報する。

2019年11月28日号 掲載