バブル崩壊は、もう時間の問題――。物騒なタイトルの意見広告が掲載されたのは9月27日付の朝日新聞。同日の読売には「君子、バブルに近寄らず」、日経には「おかしいと思いませんか?」。すべて全面広告だ。右下には出稿主「さわかみ投信」オーナーの澤上篤人氏の名が。

 さわかみ投信は1999年に設立された日本初の独立系投資信託会社。創業者の澤上篤人氏は業界ではカリスマ的存在の一人だ。

 驚くべきはこれ、同社が5月10日から10回に分けて展開したシリーズ広告なのである。月にほぼ2回掲載、5カ月で3紙に計30回。澤上篤人氏ほか澤上龍社長や各部室長らが毎回、経済情勢や資産形成について自らの考えを述べている。9月14日の回では一般社員の想いが1行ずつ掲載された。

 内容は、現在の金融バブルを憂え、実体経済を見直すことの重要性を説くものが多い。同社に聞くと、

「コロナ禍で飲食業等が大変な思いをしている。仕事をやめた人たちもいる。実体経済は決してよくないのに、株式市場だけが上がっている。23年にわたって実体経済を見て長期投資を行ってきた私たちからすると、この状況は明らかにおかしい。警世の意味を込め、一般の方々にも気づいてほしいという思いで意見広告に踏み切ったのです」(広報)

常識の通じないメカニズム

 全面広告となると「朝日、日経、読売ならば1500万円ほどする」(広告関係者)とか。澤上氏はその名も『大暴落!』と題する著書も出版、一貫して同じ主張を続けている。なぜ新聞広告まで、と映るが、

「書籍だと万人の目に触れるとは限りません。朝日、日経、読売とそれぞれ違う層の読者の方に“これってどういうことだろう”と思ってもらうのが目的です。SNS等でも“広告にいくらかけたのか”“他に使い道があるのでは”などの声が寄せられました。しかし、信念をもって資金を投じる意味では、広告にお金を使うのも企業に長期投資するのも一緒。必要だと思ったから投資したと」(同)

 警告は当たるか。金融ジャーナリストの浪川攻氏は、

「金融の常識から考えれば、澤上さんの警鐘はその通りです。ただ、安倍政権以降、経済における唯一の成果が株高なのです。これほど政権が金融に深く関与してきたことはなく、株価が暴落したら、政権は慌ててもう一段の金融緩和に踏み切り、必死に支えるかもしれない。残念ながら、もはや常識の通じないメカニズムとなっている気がします」

 大暴落も怖いが、非常識相場の継続もまた怖い。

「週刊新潮」2021年10月14日号 掲載