今年度前期のNHKの朝ドラ「らんまん」も残り1カ月。視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)は初回16・1%と低空スタートだったが、8月25日には番組最高の18・5%をマークして尻上がりに。そんな中で話題となっているのが“芸人役者”だ。
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いまや芸人が役者としてドラマに出演するのは珍しいことではない。それがNHKの朝ドラでも増えていると、民放ディレクターは言う。
「『スカーレット』(19年度後期)や『カムカムエヴリバディ』(21年度後期)などでも多くの芸人役者が出演していました。前作の『舞いあがれ!』は大阪放送局制作ということもあり、又吉直樹や山口智充、くわばたりえ(クワバタオハラ)、ぼんちおさむ(ザ・ぼんち)、浅越ゴエ(ザ・プラン9)、西森洋一(モンスターエンジン)、松尾鯉太郎(ヨンゴビンゴ)、笑福亭銀瓶など9人の芸人役者が確認できました。しかも、山口とくわばたはヒロイン・福原遥の実家の隣でお好み焼き屋を経営し、福原の夫となる赤楚衛二は彼らの息子。又吉は歌人になる赤楚に大きな影響を与えるなど、決してチョイ役ではありませんでした」
ところが、「らんまん」での芸人役者の起用法は、ちょっと異なるという。
「今のところ『らんまん』で確認できた芸人役者は5人と、むしろ少ないほうかもしれません。ただし、今回は起用法に意外性があり、彼らの演技にも話題性が多いことが特徴です」
「らんまん」で芸人役者が活躍し始めるのは、主役の槙野万太郎(神木隆之介)が土佐から上京してからだ。
「な〜にぃ〜!?」
まず登場したのは、東京帝国大学植物学教室の講師として登場した今野浩喜(44)。
「朝ドラでは『まんぷく』(18年度後期)で初登場。日曜劇場『下町ロケット』(TBS)では佃製作所の経理部係長を演じ、『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』(テレビ東京)にも出演したように、いまや名脇役ですが、元々はキングオブコメディというお笑いコンビを組んでいました。10年には『キングオブコント』(TBS)で優勝し、3代目の王者となった実力者。芸人としての彼は“キモキャラ”“不気味キャラ”などが評価され、将来が期待されていました。しかし、相方の不祥事で15年にコンビを解散。ピンとなってからも大喜利などのお笑いライブを続けていますが、鼻の頭が凹んだ特徴的な顔は、クセのある人物を演じるとピッタリで、俳優として評価を高めています」
「らんまん」での今野は、万太郎にはぶっきらぼうな言葉で当たりながらも友情を感じさせる難役を演じ、大学を去って行った。
続いて5月22日に登場したのが、東大職員として登場したお笑いコンビ・クールポコ。の小野まじめ(46)。
「『らんまん』で芸人役者が注目され始めたのはここからです。彼の餅つきネタでは『なぁ〜にぃ〜!? やっちまったな!!』の決め台詞が有名ですが、今回、小野の真面目なセリフに、神木が『な〜にぃ〜!?』と返したことが話題となりました。それが神木のアドリブだったことが小野のX(旧Twitter)で明かされ、話題になりました」
本物のなすび
8月に入ると、ジョイマンの高木晋哉(43)が郵便配達員の役で登場。
「自身のラップネタ『ナナナナ〜ナナナナ〜』を口ずさみながら現れると『こんにちは、槙野さん。郵便です』と神木に手渡すという、まさかの役作りには驚かされました」
さらに、荷物配達員として登場したのが、かつて「進ぬ!電波少年」(日本テレビ)の“懸賞生活”で人気となったなすび(48)だ。
「採取した植物の大荷物を届ける役でしたが、“懸賞生活”へのオマージュとも取れる演出で、遊び心が感じられました。もともと『らんまん』では、神木が石版印刷を学びに行った印刷所の絵師・河井克夫の顔がなすびに似ていたため、SNSでは『なすびなのか?』と話題になっていました。その後に本物が登場したことで、『今度は本物のなすび』と再び話題になりました」
NHKは狙ったのだろうか? そして8月23日の放送で「大橋彰」とクレジットされた役者が注目された。
「名前だけではわかりませんが、役どころは宮澤エマが女将を務める料亭の料理人。よくよく見れば、裸芸で話題になったアキラ100%(49)でした。もちろん裸芸を披露することもなく、淡々と演じていました。クールポコの小野らはチョイ役ですから、話題づくり先行でしょう。ただし、それがかえって隠れキャラのようで、芸人役者を引き立たせています。こうした演出は珍しく、新しい芸人役者の使い方だと思います」
現在注目されているのが、残り1カ月、どんな芸人役者が登場するか。
「『らんまん』での芸人役者の起用は、まだ少ないですからね。視聴率も上がってスタッフも気持ちに余裕があるのかもしれません。あれだけ遊び心のある演出を楽しんでいるのですから、さらなる遊びを考えているはずです」
デイリー新潮編集部